Episode12…ブラックカフス

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Episode12…ブラックカフス

「怨差の小瓶はそのブラックカフスが取り扱っていた商品なのですか?」 「はい、ブラックカフスは南方の帝国内で闇組織として活動しています、詳しい製造元は解りませんが、月に何十本かが流通している様です」 「販売元は不明か…それ以外には何が流通してますの?」 「そこ迄は解りません…噂では可成りヤバい物も流通してると言いますが、末端の俺達にゃあ一切情報が来ないので何とも」 「そうですか…と言う事はそのヨーダと言う男、調べてみる必要がありますね」 アリスの散々な極悪非道行動に男達は反発する元気もなく寧ろ生きる為に知り得る事は話すと言う方針転換で多少の猶予を貰っていた、そんな中で話してるのはブラックカフスと言う組織の話、末端には対してプラスな話はないだろうと予測していたアリスはこうして概要だけでも掴めた事に気を良くしている所だ。 男達も、逆らわなければ優しく可愛らしい少女と理解した様で穏便な話し合いが続いている。 然し、それは建前に等しく、内情的には完全に気を許している訳ではないし、アリスとてそれは同じ事、何か有ればそんな建前は一瞬で崩壊するのだ。 「さて、もう良いわ、言った通り解放してあげましょうかね、ただ、約束は守る様にそうしないと…次は死ぬわよ貴方達」 念を押してそう告げるとアリスはテレポを発動して姿を消す、男達はどうにか生き延びれた事を喜び合い、暫くお互いを労い合った後、不意に一人が口にした。 「逃げましょう!今夜中なら行けますよ!」 「確かに…あの女はもう居ない、もう恐怖は無いし、逃げちまえばどうとでもなるだろうしな、やるか!」 「はい!」 然しそれは愚かな選択であった、我先にと逃げ出した男達は死に物狂いに逃げだしたが、途中で急に倒れ始めたのである、それは、実はアリスが仕掛けた遅延魔法…逃げ出せば命はないと言っておいたのに逃げた所為で彼等の足は石化して動きを封じられた、勿論、これは想定内の事、恐らく自分が居なくなればアレだけの恐怖体験をした彼等が逃げ出すのは計算通り。 彼等が足止めを食らった場所…そこは最近猛獣の類が良く出没する区域として辺境伯家が侵入を禁止された所、そうなれば、彼等の身に何が起きるかは解るだろう、そう彼等はその場で猛獣に取り囲まれる。 裏切れば死ぬと言うのはこう言う意味だった。 所変わってアリスは男達の魔光印が消失を受け呆れていた、予想していたとは言えこの顛末は何とも後味が悪い事この上ないが、これは想定内なので溜息一つ吐いて脳内会議を始める。 『馬鹿よね…素直にしてれば良かったのにさ…』 『一度悪意に染まると抜けれないんじゃないかな?それよりも次の手よね、彼等が死んだ事を知ったら訪問を取りやめるんじゃないかしら』 『かも知れないわね…となると、次は隣国?』 『骨が折れそうね…距離もあるしさ、いっその事一か八かでフルスペックしてみる?制御の仕方も解らないままだと万が一に困るし、訓練がてらやって見ない?』 『あーね…必要かも』 アリスの脳内会議で二人は真の力を解放し、制御を試す事が決まった、先ずは祝詞を唱える。 「全ての力を掌握し、マリアベル家の直径子孫たる自分に力を…全てを凌駕し全ての理を廃し全ての力を解放せん!我が祝詞を聞き、我にその力をお貸し賜りたい…融合転身術・フルスペック!」 そう唱え終わると地面に魔法陣が浮き上がりそれが回転し始め七色の光が立ち上る、するとアリスの髪は白金色に変化を始め瞳はオッドアイへと変化を始める、更には身体を纏う衣装が白銀色の法衣となり、腰には白銀色の剣と鞘が現れた。 光の収束と共に、アリスは白金色の長髪、赤と青のオットアイ、そして身体も心なしか成長して胸辺りは膨らみを帯びる、魔法陣が消失すれば何とも大人と子供の中間的な美しく妖艶な姿に代わり別々だった意識は統合されて一つになった、身体から湧き上がる力と魔力が溢れ出し僅かながら全身がオーラで纏われている。 「これは…これが私の真の姿なの?うわぁ〜大人っぽいわ!凄い凄い!」 喜びのあまり飛び上がるととんでもない跳躍力が働いて少し焦るがそこは落ち着いてゆっくりと着地した。 「制御難しいな…てか、飛べたりするのかな?」 試しに今度は『飛翔』と唱えて見ると…何と言う事でしょう、アリスはフワリと浮き上がり始め続いて方向を示せば其方に移動してしまいました。 次にやったのは物理攻撃、降りた先にあった巨大な岩に向けて剣を引き抜いて軽く振れば立ち所に岩は真っ二つになり、続けて風の魔法『シルフィード』を唱えれば岩は跡形も無く消し飛んだ。 「破壊力ヤバいな…」 更に続けて生成を試せば万能薬なる万病に効くポーションやらエリクシルなる回復ポーションが完成する、銀髪赤眼のアリスの千里眼は更に強化されて真眼と言う物に強化されるし識別の能力は万物正眼と言う物、エクステンシブサーチは心眼に変化してる。 正にやりたい放題の状況にアリスは喜びを覚えた。 「この分なら領都にも一瞬かも…」 アリスはテレポとなえると、一瞬の内に物置部屋へ帰還して驚いた、戻った序でに辺境伯と対面したアリスは事の経緯を全て話し、翌日には男爵家に任意同行が下り、フリオやその両親弟や妹迄も呼び出される事になった、その際、アリスに善の術をかけられていたフリオはやってきた事を全て告白し失墜したが、男爵家の存続は許され、問題を起こしたフリオは父から絶縁を辺境伯が同席している内に申し渡され男爵家を追放された。 この後、フリオは自らの過ちを悔いて自害したと言う話が伝わって来たが、アリスが知る事になるのはもう暫く後の話である。 「それでは兄様…わたくしはホワイトガーデンに帰りますね、これからのご活躍、遠きホワイトガーデンにてお祈り致します…」 「ありがとう…アリス、お前も元気でな」 「はい!ありがとうございます、兄様」 「それにしても雰囲気変わったな、大人になった」 「それは、本当のわたくしになれたからですわ…これからはこの姿で行こうと存じます」 「そうか…」 その日、アリスとオルガは辺境伯家の庭先で別れを告げた、ホワイトガーデンに帰る…とは言う物の、実はアリスの目的は他にあった。 やはりと言うか、3日後にヨーダが来る話は取り止めになった様で現れる事は無く、アリスは隣国キノアス帝国のロベルト・ルギアス辺境伯領へ向かう事を決めていてホワイトガーデンへの送り届けも断っている、代わりに式神を使い手紙を書いてアリスはそれをホワイトガーデンに送り込んだ、内容は滞在延長を伝えるもの、変な心配をさせない為である。 そして、前日には捨てられた町サミットと言う場所に住む許可を辺境伯から貰っている、実はアリスは融合した事で新たに森羅万象と言うスキルを得ている、これは範囲指定さえすればそこだけを思う様に変化出来る物、アリスはホワイトガーデンを思い返し、そこにあった廃教会を森羅万象の力で再生した、然し、それはアリスにだけ見える結界に囲まれた部分で、見た目ではその捨てられた町は残ったままだ、結界で隔てる事でアリスが作り上げた教会は隔絶された場所にのみあり、町自体の変化は何にもないままであった。 「暫くはここに潜伏ね、ブラックカフスの尻尾くらい掴まないと行動出来ないからね」 そう呟くとアリスは陰陽術を試して見る、理を外れた存在ならそれも可能かと考えた、式神が作れたと言う事は式神を母体にした人形も作れるかも知れないと考えた末に魔法陣を描き、媒体となる式神に念を送る、案の定、式神は人形へと変貌して巫女衣装の様な服装として人の形を形成した。 「主様、私共は何をすれば良いのですか?」 「貴女達にはこの教会の維持管理をお願いするわ…私が留守の時は特に注意して貰いたい…今から知り合いの情報を貴女達に記録させる、その方々が現れた場合、丁重に接して貰いたいのよ…良いかしら?」 「主様のご命令とあれば承知致します」 アリスは2体の人形にその情報を記録させた、ニーサとマーサと名付けた彼女達は以降アリスの片腕として様々な事に見事対応する様になる、それはまだまだこれからの話。 こうしてアリスは仮拠点を設け、ブラックカフスに対しての活動をする事になって行くのである。
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