Episode11…捨てられた町で…

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Episode11…捨てられた町で…

魔光印を追跡するアリスはその光がある場所で止まった事を確認した、そこは捨てられた町の様な場所で、港側の南門を抜けた先の海に沿った南西の外れだ。 (人気は無いわね…) 魔光印の指し示す1km手前の雑木林で身を潜めたアリスは千里眼でその方向を見る、確かにそこには先程フリオと同じ所にいたベリルと言う名の男がいて、何やら周辺を警戒している。 (不法占拠かしらね…然し、他に人気が見当たら無い、これはひょっとすると地下に…) アリスは確信めいた呟きを感じるとベリルが真っ直ぐ歩き出したのと同時に素早い動きで付近迄迫りまた身を潜めた、そこに入って行ったベリルと言う男は真っ直ぐ進み建物らしき物体の中に入って行く、そして何かしているのか暫くそこに止まるとやがて歩き出し、直様魔光印が消えた。 (地下か…仕方ない行ってみますか…) アリスはそう言うとその明らかに廃村の様な町の中に入り真っ直ぐ進む、暫くするとその先にある建物が教会の廃墟らしい物だと把握出来た、木の扉は朽ち果て教会の顔でもあるロザリオは失せ、ステンドグラスだったであろう窓はあちこち破損している、更に建物の一部は経年劣化からか崩れ落ちていた。 中に入ると辺りは薄暗く、恐らく講堂であっただろう場所の状態は最悪である、椅子は朽ち果て祭壇はカビと半分は崩壊している、像の飾ってあっただろう位置もボロボロで像すら存在してい無い。 どれだけ昔に捨てられたのか解らない程酷い有様。 然し、良く見れば木工像あっただろう場所には小さな扉があった、広さにして大人が四つん這いで通れる感じである、扉の前に来たアリスは扉越しに再び千里眼を発動すると内部に数人の大人が輪になって座っている事が確認出来て会話も聞こえた。 「……結界に阻まれただと?本当かナバル」 「間違いない、あの力は尋常な物では無く恐ろしい力だった、あんなの余程高位の神官以上の者が使う奴だ、俺達の力じゃ太刀打ち出来ん、フリオの奴に怨差の小瓶の追加依頼を受けたが、怨差の小瓶ではどうにもならねーと思ったから断った、替わりにリズベットの方を誘拐した方が良いと申請したが…やると思うか?あの腰抜け女ったらしが」 「やらねーだろうよ、ビビっちまってな、第一リズベットっちゃあ辺境伯の娘だろう?そんなお家断絶になる様な騒動を起こす力量が有ればとっくにやってんだろ」 「いやいや、ガルフ…彼奴は馬鹿だからやるかもしんねーぞ?」 「シュルツ、そりゃあ流石に無理じゃねーか?第一親父さんが黙ってるわけねーだろ?フリオとは違い頭も切れてる奴だ、辺境伯とやり合うなんて無謀な事敢えてやらねーし、真っ先にフリオがぶった斬られるぞ!」 「確かに…アレは身内でも容赦ねーし、被害届も出たから実質、 家系は弟のロイか娘のシシリアに継がせるんじゃねーか…どの道フリオはお払い箱だろ?」 「それよりどーするか…フリオがつかえねーとなると、俺達でやるか?」 「人攫いをか?」 「だってよ、お姫さんだぜ…誘拐拉致して身代金をぶんどれば暫く遊んで暮らせるじゃねーか!」 中にいる面々がカラカラと大笑いしていた、それを聞いていたアリスは胸糞悪い思いに駆られ、レッド&ブルー会議が脳内で行われた。 『どう思う、ブルー?』 『胸糞悪い連中ね…しばき倒したいわ、レッドは?』 『半殺し…位にしないと、死なれたら元も子もないし』 『殺しちゃうのは簡単だけど、それやっちゃうと手掛かりが途絶えちゃうし、半殺しにして拷問…かな?』 『サラッと怖い事言うわね…ブルー感覚的に目が据わっている気がするけど?』 『あら あらまあまあ…そんな事ありませんわ、レッドさん…ただ、屈強な男共がわたくしの前に平伏す姿が楽しいだけですわよ…オホホホホッ』 『て事で、彼等達には平伏して貰いましょうかね、ブルーさん』 『お任せしますわ…レッドさん』 あっさりと方針が確定した。 「次の取引って何時だったか?」 「明後日だろう、ブラックカフスのヨーダさんが来るからな」 「そうか…ならちょっと物騒なもんでも頼むか…」 そんな会話をしている所に足音が響いた。 「誰だ!」 ベリルが吠えると暗闇の中から銀髪赤眼の見目麗しく妖艶美的な少女が姿を表してカーテシーを決め、続けてそこに居た男共に質問する。 「お聞きしたいのだけど…貴方達はこんな捨てられた町で何をしているのかしら?確か、申請も無しに棲みついてる連中を不法占拠と言うのではありませんか?」 「はぁ?誰も居ないから住んでる…それだけだ」 「あらあら、それは不法占拠ですわね…これは辺境伯様に報告しないといけません、放棄されたとは言えこの町は辺境伯様の領地内、無意味にここに人が居るなんて事はあってはなりませんからね…では、この事、辺境伯様にご報告差し上げて然るべき対処をして頂きましょう」 「クックックッ、飛んで火に入る夏の虫だな、嬢ちゃん俺等ブラックカフスの人間が生かして返すと思うか…そうだな、嬢ちゃん美人だから身包み剥いでたっぷり可愛がった後に他国に売り飛ばしてあげよう」 「そうですか…まあ、良いでしょう、やれるならやってみたら良いですわ…わたくし、そう易々と捕まる程弱くはありませんし、第一こんな子供が一人でここに来た意味を貴方達は理解出来ていない様だから教えてあげますわね…身体ばかりのジジィさん達に」 ニコニコと悪びれも無く言うアリスに周りの男達はカチンと来た様である、挑発成功と言う所だ、アリスの背後に回った男が襲い掛かるがアリスはまるで相手にしないとばかりにひらりと交わす、まるで鳥の羽の様な回避力に襲い掛かって男は体制を崩して前のめりに転ぶ、然もアリスはこれ見よがしに笑って見せたので、更に男達は血の気が上がって次々と飛び掛かる、然し、その全てをアリスはのらりくらりと交わして更に笑った。 「薄鈍(うすのろ)ですわね、そんなんじゃ私は捕まりませんよ、正に鬼さんこちら!ですねウフフフッ」 それからも何度と無くアリスに飛び掛かるもアリスは余裕綽々で交わし、息が切れ始めた男達とは対照的に呼吸も動きもまるで落ちる事はなくその度に不敵な笑い顔を見せる。 「な、なんなんだこのガキは…」 「わかんね…ただ、普通じゃないって事だ」 「くそっ!こうなったら術で…」 ベリル…基いナバルが無造作に魔法を乱射する、が、アリスはそれすらも悉く交わして笑みを浮かべた。 「弱過ぎですね、じゃあ…そろそろ終いにしましょうか時間の無駄ですし【パラライズ!】」 そう放った次の瞬間には魔術を使うナバル以外の男共が麻痺を起こして倒れ、効果の見られないナバルに対しては一瞬で懐に入り込んで強烈なボディブロウ…基い下半身に蹴りが入り泡を吹いて倒れた。 「この程度ですか…だらしない方々ですね、じゃあ今から尋問でもしますか?素直に答えたら加減しますが…ダンマリを決めると言うなら」 アリスはそう言って周りを見渡しブロックの破片を見つけると上から踏み抜いて粉々にしてから振り返りニヤリと不敵な笑みを見せ 「男をやめても良いなら容赦無く踏み潰して差し上げますけれど、望まないと言うなら素直に正直にお答え下さいな…おじさま方…ね、ウフフッ」 即ちそれは急所を踏み潰す意味に等しく、痺れで動けない男達は皆が皆、真っ青な顔をして、アリスの質問に素直に答えるのだった。 それから暫く。 「さて、一応聞きたい事は聞けたから良しとしましょうかね…3日後か、仕方ありません待ちましょう」 「あの…アリス様、俺達は」 「そうですねぇ〜一つお願いを聞いてくれますか?」 「なんなりと…」 「素直な事は良い事です、そのブラックカフスの幹部らしき人物ヨーダさん、素直に受け入れて貰えます?そーしたら貴方達の命と性別は補償致します、でも…もし裏切った際は命の補償も性別の補償も無くなるので…んーと、大事な部分を踏み潰して心臓を1突き…いや、ジワジワとなぶり殺して差し上げますね、私的にはその方がとても楽しいですけれど…ウフフ」 真面目な顔でそう言う言葉を吐くアリスに心底怯えて震える男達、此奴は絶対やるから逆らうな…は男達の暗黙の了解となった。 「クソガキめ!俺様にこの様な…」 他の男達よりも後、今目覚めたベリル…基いナバルが口にしてはならない事を口にした、周りの男達に緊張が走り青褪めて首を左右に何度も振るが、ナバルは知る事かとばかりに暴言をアリスに吐きまくる。 「貴方は素直ではない様ですね…仕方ありません…まあ良い見せ締めでしょう…貴方にはとっておきのプレゼントを差し上げましょうか…」 アリスは腰元から短剣を引き抜いてナバルに近付くとにっこりと微笑んでナバルの股間の直ぐそばにナイフを突き立てる、瞬間、流石のナバルも黙り込んで青褪めてたが、アリスはおでこに手をあて無言で何かの術を詠唱した、すると急にナバルは身体中に痛みが走る幻影に襲われて悲鳴を上げた。 「何をしたのですか…アリス様」 「幻影です、痛覚を過敏にして幻影に繰り返し刺される術を掛けました、痛みと緩和が連続して彼を襲い、抗えば抗う程に精神が崩壊して行きます、わたくしにアレだけの暴言を浴びせたのですからそれに対する報いです」 それから痛みと癒しの連続を受け続けたナバルは遂に精神崩壊に至った、アリスは漸く彼に掛けた幻影を解除したが、時既に遅く、彼はそのまま精神が崩壊して仕舞い先程アリスが突き立てたナイフを使って自分の首を掻き切って自沈した。 『やりすぎた?』 『良いのでは?自分から命を絶ったのだから仕方がないと思うわよ』 これを境に残った男達は以降、一切の反論をアリスに向けず忠実な犬になる方がマシだと理解した、そして誰かが言った、その銀髪に赤い瞳を観察していたらしくふと頭を暁の稀人と言う言葉が駆け抜けた事を。
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