間話4…ルカインの実力

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間話4…ルカインの実力

「頼みがあるんだが?」 ルカインはあれから2日程静養している、別に悪い人間ではないのでアリスもニーサもマーサも何等変わりなく普通に応対していた、今は昼食を食べ終わり、開口一番にルカインが言ったのが頼みがあると言う事だ。 「頼みですか…何です?」 「アリスに頼みたいんだ、俺と模擬戦をして貰えないかな?己の力を試して見たい」 「また、唐突ですね…何でです?」 「いや、この2日間、アリスを見ていたのだが、何やらとんでもない力の持ち主と感じてな、剣士としての心が凄く高揚するんだ、だから模擬戦を一度アリスにお願いしたいんだ、まだまだ強くなりたいと言う意識があってな、是非とも頼みたい」 ルカインの顔は真剣だ、純粋に力を試したいと言う気持ちが出ていてアリス自身も感心する。 「わたくしと手合わせ…ですか、まぁ…構わないですけど真剣で…ですか?」 「いやいや、怪我の再発は避けたい…出来れば模造刀の様なものが嬉しいのだが…」 「そうですか…ならば少しお待ち下さい、今準備を致しますので」 「あるのか?」 「いえ…作るんですよ精錬で」 「使えるのか…精錬術」 「私は凡ゆる全ての術式を使えます、精錬なんてすぐに終わりますからご心配なく」 「そ…そうか…解った」 アリスはニコッと笑うとマーサに後片付けを頼んで食堂を後にして15分程で剣を二本持って戻って来た、その驚異的なスピードにルカインも驚愕したが、その剣は模造刀らしく刃が付いていないが可成り頑丈そうに作られている、その一本をルカインに手渡すと入口に向かう方向に案内した。 結界の外は廃墟、然し、入口を出た瞬間ルカインの目にしたのは闘技場の様な場所、はて?と首を傾げると、相変わらずアリスはクスクスと可愛らしい笑顔を見せながらその場所の説明をする。 「ここは外界から隔絶された闘技場…と言うかわたくしが作った広場です、ここなら誰に邪魔される事なく望むがままに試合が可能です、然し、ルカイン…大丈夫なんですか?わたくしと剣を交えて士気を失わないで下さいね、別にわたくしは貴方の士気を下げる目的で引き受ける訳ではないのですから」 「そこは心配要らない…俺は本気で挑む、後はアリスが判断して欲しい」 「畏まりました、では早速始めましょう、ルカインさん真剣勝負を…」 とは言えアリスは既にルカインの力量をある程度補足している…アナライズを唱えれば今の相手の力量を測る事が可能で、アリス自身もそれを元に力加減をする。 試合が始まる。 ルカインは名一杯の動きで鋭い剣先を向けるが、アリスにとってそれは大した速度ではなく受け流す仕草さえせずにその攻撃を交わしてみせた、自慢の剣技をあっさり交わされた事で驚愕するが、諦めたりはしない。 「やはり君は強いな…だが、俺も諦めないよアリス」 その後もルカインは全力で剣技を振るうが空を切るばかりで一度も当たらない、ただ、アリスが見るからに彼の剣技はスピードを増して正確さを持ち始める、何撃が空を切った後に初めてアリスは剣を受け流した。 「中々のスピードですね、でも、まだまだです、王国騎士団の団長位は力量があるのではありませんか?」 「そうか…然し、アリス…君は全然本気を出していない様だが参考迄に一度見せて欲しい、君の実力を…」 「成る程です、念の為言いますが…動かないで下さい、変に動いたら怪我してしまいますからね」 「解った!」 「では、一先ず…」 アリスはバックステップで距離を空けると次の瞬間瞬く間も無くルカインの首元寸前で剣先を止めた、全然見えなかった、と言うかアリスが踏み込んだ瞬間さえ捉える事が出来なかったのである。 「恐ろしいスピードだな…全然捉えられなかったよ」 「これでも8割ですよ…ルカインさん、多分、普通の人間…いや、歴戦の英雄だとしても捉えきれないと思います、わたくしのスピードは…」 「かも知れないな…一体君は?チートクラスなのか?」 「チート?それは何ですか?私は12歳の非公式の薬師ですよ…ルカインさん」 「薬師…なのか?」 「ええ…貴方からしたらわたくしは子供です」 その答えにルカインも唖然とするが直ぐに居直ると末恐ろしい娘だと心で強く感じた模擬戦だった。 「でもきっと…ルカインさんはまだまだ強くなれます、わたくしが補償致しますわ、何せ一度でもわたくしに剣を受け流させたのですから」 「そうか…それは喜ぶべき事かな…所でアリスは何でこんな所に居るんだい?差し支えないなら教えてもらえたら嬉しいのだが…」 そう、最初アリスに出会った時から気にしていた、何でこんな場所に彼女達は住んでいるのかと…その答えはあっさりとアリスの口から溢れる。 「わたくしはブラックカフスと言う組織を追って居るのです、所がそれに繋がるだろうヒントを失い難儀して居る最中でして、後は闇市と言う物を知りたいと」 「ブラックマーケットの事か…ああ!それなら噂だけは聞いた事はある、何でもそこでは様々な物が高価で売られていて、そのブラックマーケットを仕切るのかブラックカフスと言う組織であると…然し、奴等の消息は掴めていない様だ、それにその噂話は隣国の帝国内で聞いた話で詳しくは解らないんだ」 「成る程…では、その帝国に足を運んだ方が良さげですね…何にしろそんな物を野放しには出来ませんし、見つけ次第殲滅しないとなりませんから」 「一人でそれを?」 「勿論、多分、隣国の話ですからアレクサンドロ・タイクーンは手出し出来ませんからね」 「なあ、その件…俺も参加して良いかな?」 「構いませんが…自分の身は自分でお守りくださいね、貴方を庇いながら…と言うのは難しいですから」 「その心配は要らない」 「そうですか…なら構わないですよ、人手が増えれば少しは早く解決出来そうですからね」 斯くしてルカインの実力を見据えたアリスは彼を加えて隣国のキノアス帝国に潜入を決意した、アリスはまだ全貌を見ない組織に少しでも近付いてやると士気を高めるのである。
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