Episode5…4者会合

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Episode5…4者会合

「初めまして、今回お世話になりますアリス・マリアベルと言います、オルガ兄様とはホワイトガーデンにいた折に良くさせて頂きました」 「これはご丁寧に…私はアドミル・マイヤー辺境伯家私設銃士隊、第三師団副師団長のミラ・ウォルツ…隣にいるのが…」 「オルガ・ホワイトが上司、アドミル・マイヤー辺境伯家銃士隊隊員のバレット・ルナークです!」 休憩施設内の小会議室でアリスはオルガ以外のミラ副師団長とバレットと初めて顔を合わせた、ミラはスタイル抜群でバレットは筋骨隆々の二人とも頼り甲斐のある人物として認識したが、反対にミラはその歳の割に妖艶美的な12歳の少女に驚愕し、バレットに至ってはアリス持つ儚げて美しい少女のアリスに鼻の下が嫌でも伸びてしまうと言う男らしい反応を見せる。 「貴女…本当に12歳?」 「はい、間違い無く12歳ですよ、ミラさん」 「これは…世も末かしら、まさか一回りも下の女の子に圧倒されるなんて…」 「ミラさんも素敵な方ですからそんな過大評価しないで下さい…言葉に詰まります」 「あ、いや…正直な感想よ?バレットなんて鼻の下伸ばしてるし…てかオルガは何で得意気な訳?」 二人のアリスに対する高評価にオルガはまるで自分の事の様に得意気な顔をしている、アリスの年甲斐もない美人さにはオルガも相当嬉しい様で、何処か『兄様』と呼ばれた所為もあってドヤ顔をしていた。 「妹が寛大に評価されるのは兄としてとても嬉しい事ですから、この位勘弁して下さい服師団長…てか、バレット先輩、少しいやらしい目つきに見えますが?」 「ば、ば、馬鹿言うな…そんないかがわしい目でなんて見てないぞ?確かに可愛い子だと思うが、それだけだ、変な勘繰りは止めろ、オルガ!」 「こんな美女を目の前にしたらバレット程度の男なんてイチコロだ、オルガは良く平気でいるわね?」 「ホワイトガーデンでは兄妹の様な関係でしてからね…確かに最初彼女を見た瞬間はヤバっ!とか思って居ましたけれど一緒に生活する内にアリスとは多分、真に兄妹になったと思います」 「確かに集団生活を男女で同じ場所に共に過ごしていれば(よこしま)な気持ちも薄れて仕舞うと聞くからバレットとオルガでは考え方も対応も違うでしょうね…然し、個人的な見解だけど、アリスちゃんは多分、領都に行ったら人気になるし、申し訳ないけど依頼主である辺境伯様のご子息に気に入られると思うわ」 「御子息と言うとアーネスト殿下…ですか?」 「そうね、彼の方ならもしかしたら嫁候補として推奨するかも知れないわね、でも、聖教教会との関係もあるから強引に所望はしないでしょう、あそこと揉めると流石に王家から何かしらの制裁を受けて仕舞うから」 王家と聖教教会は密接な関係を持っている、その王家の臣下である辺境伯の息子と言えども王家に問題視されれば辺境伯家の存在すら危ぶまれて仕舞うのは必定、簡単に嫁にしたいとは言えない、他の貴族や民ならば強引な婚姻も叶うだろうが、聖教教会相手では王家の不況を買って仕舞い兼ねないので、そんなら危ない事は一個人の思惑では叶わないと言うのが現状だ。 とは言え美しい上に噂の絶えない少女であるアリスを手に入れたいと言う願望は恐らくあるだろう…今回の辺境伯家訪問にはそう言った思惑も含められているのは想像に難く無い、貴族とは常に利益を優先する生き物、何らかのアプローチはあると思える。 「まあ、婚姻の話は兎も角、アリスちゃんの実力を知ればきっと専属契約位は迫られる覚悟だけはしておいて間違いないと思うぞ、オルガ」 「僕が思うに辺境伯様やアーネスト殿下はそこら辺の貴族よりは真面目に民を思われる方です、誰の子かも解らない自分を技術だけで登用される様な御方ですから」 「そこは私も自信を持って言えるな…然し、問題はその他の貴族達だろう…今回の事で多かれ少なかれアリスちゃんの実力は知れ渡る、そうなるともしそれが高い能力且つ良い結果を生んだとしたら…貴族共は彼女を付け狙うかも知れない、寧ろ、要件の結果の良し悪しではアリスちゃんに注目の目が向けられるな…」 「そうなったら安全な辺境伯様の方で対策するんじゃないか?」 「まあ、そうなる…だが、考えてみろ、バレットよ、彼女がそれを望まず、此処に帰るとしたら…」 「ああ…その心配はあるか…オルガ一人で海千山千の貴族に太刀打ちなど出来ないだろうからな」 「最悪…誘拐も有り得る」 考えてみればミラの話は強ち間違いでもない、辺境伯家に行くと言う事はそう言う事だ、然し、アリス自身頼まれ事があると内容次第で断る事は出来ない、ましてや今回はその辺境伯様の娘さんである、断る理由がない。 アリスは考えた。 知られる事は確かに何かと問題も起きる事は確定済みの話、とは言えこの辺り一体に多大なる支援をしている辺境伯家の依頼を断る訳にも行かない、ふと思った、自分は孤児では無くお客人と言う扱い、ならばホワイトガーデンと領都ルードを往来する許可位貰えるのではないかと…そう言う話が出来ればお世話になる事もやぶさかでは無いと思える。 勿論。 それは、今回の依頼を成功出来た場合だ、失敗(納得出来なかった)した時はそんな危険は無く、これまで通りにホワイトガーデンで暮らせる、とは言え頼まれた事を適当にする事は憚られるので一つの案を提示した。 「あの…」 「んっ?どうしたアリス」 「兄様、一つ確認したいのですけど良いですか?」 オルガがそれを聞いてミラとバレットの方を見るて二人は頷いていたのでアリスに「いいよ」と促す。 「もし、今回の事が上手く行き、皆様の警戒する事が起きるかも知れないと言うならば別に私はその時の話に対して考えは有りますよ、内容にもよるでしょうけど」 「どう言う意味?」 「例えば辺境伯様から下知を頂いた内容で私がお世話になる事となった場合、仮住まいからホワイトガーデンへの往来を許可されますか?」 「まあ、その場合…危機管理と言う意味で護衛隊は付くと思うわ…要人て扱いになるもの」 「そうですか…それならホワイトガーデンと金輪際と言う話にはならないですよね?」 「ならないと思うぞ、別にアリスが辺境伯様の養女になると言う話しじゃないからな…あ、でも…もし、そんな話が出たらある意味アリスの安全は保証される、兄としては嬉しい話だが、そうなると女神官アルマ先生と辺境伯様の合議がなされる必要があるか…」 それを聞いてミラが疑問を向ける。 「ちょっと待て!…勘違いなら良いのだが、アリスちゃんは孤児扱いではないのか?」 「はい!私、孤児院で生活はしていますが、未だに客の扱いです、私には10歳以前の記憶が無いので身元が解らない以上、孤児と言う扱いに出来ないとアルマ先生が話してくれて、未だ記憶も戻らない事から私の扱いは孤児ではなく客人なのです」 オルガが答える前にアリスの方から話を切り出して伝えてきた、実はミラ、オルガ【合議】と言う言葉に反応して疑問を呈した、孤児ならば普通は養子縁組と言うスタイルを取るのが当たり前、そのアリスを孤児と思って居たミラは彼女の言葉に思わず拍子抜けしたのである。 そして、アリスが孤児では無く客と扱われて居るならば監督するのは女神官アルマの仕事なので、辺境伯家に預かる場合は二者間の【合議】を執り行い監督者の許可を貰わねばならない。 「オルガが合議等と言うから不思議に思ったがアリスちゃんが客人だと言うならばそれが正しいな、お前の時も合議は開かれたからな」 「そう言う事です、副師団長」 「となると、後はアリスちゃん次第か…彼女の生み出す結果次第で話は大きく変わるな」 かくして4人の会合は終わり、いよいよ出発を迎える事となる、然し、バレットは別の事を考えていた、それは暁の稀人=アリス・マリアベルの可能性である、彼女は記憶を失っていると言った、然も、暁の稀人は3年程前から姿を見ない…それにアリスは客人扱いとなっている事も相まって俄然、二人が同一人物かも知れないと言う疑問が強くなったのだ、だが、暁の稀人の容姿とアリスの容姿が結び付かない点がまだまだバレットを悩ませている。 そんなこんなも有りながら4人はアラッソの町から移動を始めたのだった。
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