プロローグ

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プロローグ

 自宅のソファーに腰掛けて、一冊の小説を開いた。表紙には『桜野(さくらの)美海子(みみこ)の最期』というタイトルが記されている。  自分でもこれを読み返すのは初めてだ。あの白生塔(はくせいとう)の事件を好んで追体験しようなんて思うほどに神経は太くない。現にもう、この小説が出版されてから半年以上が経過している。  では、なぜ今になってこれを読むのか――それは、今日であの事件の終結から、ちょうど一年となるからである。今日を逃したら、あの事件と決別する機会はもうやって来ないだろう。  感傷的な気分になりながらも、ページをめくった……。
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