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 手当を受け、悠香は何とか一命を取り留めていた。栄養が足りず、免疫力も衰え、数々の傷からばい菌が入り危険な状態だったらしい。だが、もう大丈夫だ。  廊下の椅子に座り、ホッと胸をなで下ろす富樫。  静かな病院内。制服姿の警察官が4人、こちらに向かってくる。  「富樫巧だな? 暴行傷害容疑で逮捕する」  一人が言った。手錠を取り出している。  「そうだけど。逃げないから、あの子が目を覚まして元気なのを確認するまで待ってもらえませんか?」  富樫が言うが、警官達は表情を変えない。  「ダメだ。今すぐ連行する」   ガックリと項垂れる。しかし……。  「待ちなさい。手錠の必要はないだろう」  新たな声が後ろからかかった。見ると、初老の紳士が歩み寄ってくる。その横には気障男がいた。  「神奈川県警刑事部捜査一課の立木浩三だ。事情は聞いた。彼のことは、私が責任を持つ」  立木という刑事が言うと、警官達は敬礼して退いていった。  「大丈夫だよ、チャンピオン。この人、良い刑事さんだから」  気障男がウインクしながら言う。  いや、チャンピオンじゃねえし……。  富樫は苦笑するしかなかった。  悠香の病室へ行くと、彼女は寝入っていた。  隣りにある椅子に座る。いつしか富樫もウトウトしてしまった。  しばらくして目を覚ますと、悠香も起きてこちらを見る。  どちらからともなく、微笑み合っていた。
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