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6
とりあえず富樫の段ボールハウスに連れてくると、悠香は疲れたのか寝入ってしまった。
公園で彼女の話を聞いた。
半年ほど前、悠香の両親は事故で亡くなった。
その後、遠い親戚――彼女は会ったこともなかったという――夫婦に引きとられたが、何かあるとお仕置きだと言って叩かれたり、タバコの火を押しつけられたりしたらしい。
辛くなって何度も逃げ出したが、そのたびに連れ戻され、ひどい仕打ちを受けた。
児童手当や遺児となった子を引きとったことで得られる助成金が目当てのようで、お金がもらえるから仕方なくいさせてやってんだ、と言われたそうだ。
かわいそうに……。
そんな毒親の元にいるより、施設に入った方がずっとマシだな。何とかならないかな?
そう思いながらふと悠香を見ると、苦しそうな表情になっていた。顔が赤い。
え? と慌てて額に手をやる。熱い。
ひどい扱いを受けていたから、どこか悪くしたのか? ただ事ではない。息も荒くなっている。
「悠香ちゃん、大丈夫?」
声をかけると、彼女はうっすらと目を開けた。
「本当のお母さんとお父さんのところ、行けるかなぁ……?」
涙を流しながら、震える声で言う悠香。
そんな……。
富樫は悠香を抱き上げた。
「元気になって、もっと幸せになって、それから何十年かしたら自然と会えるから。その方が喜んでくれる。それまでは頑張るんだ」
小さな体から、尋常ではない熱を感じた。早く病院へ行かなければ。
段ボールハウスを出ると、富樫は走り出す。しかし、どこへ行けばいい?
「どうしたの、チャンピオン?」
折良く気障男が通りかかった。
「どこか良い病院、知りませんかっ?」
声を張りあげる富樫。「えっ?」と目を見張る気障男に、大急ぎで説明した。
「わかった。ついてきなっ!」
気障男がそう言って走り出した。
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