幼馴染なふたり、だけど

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幼馴染なふたり、だけど

「瑠羽、オレさ」 駿の改まった声に、思わず姿勢正す。 ふたりとも、前向いたまま。 「うまく言えっかわかんねーけど…」 ふー、とひと呼吸。 「瑠羽のこと、すげぇ大事に思ってる」 ドキッとした!…びっくりさせないでよ、駿。 「俺ら産まれる前からずっと一緒で家族みたいなモンだし、これからも大事にしたいって」 「…あたしも、同じ気持ち」 そういう意味ね、わかってる。 「ん、だよな、うん」 両手を組んだまま、しばらく沈黙。…駿の話ってそれだけ? 「オレ男だしさ、それ以上の感情持ったらアウト、ってのあって」 静かに話し出した。 「なんかあったらもう、瑠羽んちで寝起きとかできねーし」 「なんか、って?」 「だから、なんかだよ。俺たち男女だろ、世話になってるお前のママに申し訳ねぇようなことはできね、っての」 せっかく信用してくれてんだからさ、って。 「瑠羽といんのが一番ラクだし、このまんま、って思ってたけど」 不意にこっち向いて 「榊、どーすんの」 「…え?」 「コクられてたろ、昨日」 なんで知ってるの? 「いたんだよ、オレ。隣の棚で本探してて聞こえた」 「…え」 全然気づかなかった。 「つきあうの?」 駿、真っ直ぐあたしの目を見てる。 「…わかんない、どうしたらいいか困ってる」 「瑠羽が決めることだけど、俺が口出していいなら、やめて欲しい」 「…え??なんで」 「だから言ったろ、瑠羽が大事って」 駿の顔、みるみる赤くなってく。 「ダメだってストップかけてたけど…他のヤツに瑠羽取られんの、ヤなんだよ」 ちょっと乱暴に言って、あっち向いちゃった。 「…駿?」 今のって… 「大事なの、俺にはお前が。一番大事」 ちっともこっち向かない。 「照れくせーな…」 ぼそっと言ったの、聞こえた。 「鈍いな、わかれよ」 「…なんとなく、わかった」 うれしさでニヤニヤしてきちゃう。 「あたしも駿が一番大事だよ、ずっと前から大事」 「…ん」 ふー、って駿、またひと呼吸おいて、今度はちゃんとあたしを見て 「俺のために断ってくれる?言いにくかったら一緒いるし」 「…大丈夫、ひとりで話せる」 「…頼むわ」 立ち上がった駿が、あたしに手を伸ばす。 「そろそろ行こ、イルカショー時間じゃね」 「うん」 自然に手をつなぐ。 駿の大っきな手は少し汗ばんでて、雪の日とは違うあったかさが伝わってくる。 「瑠羽」 駿の笑顔と優しい声に、駿の気持ちが乗っかってる。 駿、て呼ぶと、ドキドキでいっぱいになった。 もうあたし、片思いじゃないよ! うれしさと切なさで、ちょっぴり…涙こぼれた。
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