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親友の舞衣からアドバイス
「あんたたちってほんとに、もうさぁ~」
さっさと付きあっちゃえばいいのに、って言ってるのは、うちらの家庭事情もよく知ってる、小学校から仲良しの舞衣。
舞衣には駿に彼女ができた頃から、ときどき話を聞いてもらってる。
駿と手をつないだのが月曜日。
ひとりで悩みまくったのが火曜日。
そして水曜日の今日。
放課後、舞衣の家に来た。
「どうしたらいいのか、全っ然わかんなくて」
「駿だもんね、わかんなくもなるわ」
お菓子作りが得意な舞衣には高校生のお姉ちゃんがいて、オシャレも恋愛もお姉ちゃんから仕入れてて、ちょっと大人っぽいテキパキしたしっかり者。
あたしもしっかりしてると言われるけど、舞衣から見ると肝心なところが抜けてるらしい。
瑠羽は勉強できるしリーダーシップもあるけど、鈍いよねって。
「ね、またそれ?」
「瑠羽って、可愛い方なんだよ、自覚ないでしょ」
「わかんないよそんなの、なんでそんな話になるの」
「駿じゃなくてもカッコいい子はいるよ、ってこと!」
ベッドからぴょん、と下りて自分で作ったクッキーをつまむ。
「じゃなくて」
「なに?」
「雪の日の駿、気遣い以外の感情ってあったと思う?」
「そーんなのわかんないよ、あたし駿じゃないもん」
それはそうだけど、悩みすぎて一向に答えが出なくて困ってるのに~。
「瑠羽としては、個人的感情を持ってて欲しいってことでしょ」
「…それもどうなんだろ、もうわかんなくなっちゃった」
「しっかりしなよぉ」
背中、パンってはたいて
「バレンタインに話してみれば?デートに誘って、チョコも作って渡すの、バレンタインの力借りちゃえ」
「…でも」
「わかってるよ、瑠羽の考えてることは。だから今まで隠してきたんでしょ、でも今は迷ってる。結局どうしたいのよ」
あたしがここまで気持ちをひた隠しにしてきたのには理由があって、駿からは、親友・家族みたいな存在としか思われてないこと、今の心地いい関係をわざわざ壊したくないこと。
振られて居心地悪くなって、家族どうし気まずくなる可能性もある。
付き合ってた子はあたしとは違うタイプで可愛い女の子らしい子ばかりだし、駿には女子と意識されてないのにわざわざ告白する意味ある?とも思ってる。
「だいたいの子はね、告白する意味なんて考えてないの」
「え、そうなの?」
「瑠羽はね、家族とか駿のことばっか考えすぎ、気ぃ遣い過ぎなの。自分がどうなりたいか、どうしたいか、でしょ」
舞衣の言うこと、わからなくもないけど…
「瑠羽にとって、一番大事なのは?」
舞衣の大きな目で、じーっと見られてる。
宿題なんて滅多に忘れないあたしだけど、たまに忘れて、それを先生にお説教されてるときみたい。
「…なんだろ、駿、かな」
「だから言ってるでしょ、そんなに好きなら告白しちゃえって」
また、クッキーをつまむ。舞衣の手の動きを、無意識に見てた。
「どうする?それなら相談乗るよ」
「それ以外なら?」
「何もする気ないならもう話すことないでしょ、この話は終わり」
そんなもんかなぁ…
「うじうじしてないで少しは動いてみ、って。今年はバレンタインが土曜日なんだし、デート誘えばいいじゃん」
うじうじって…確かに堂々巡りではあるけど。
「よしっ、決まりね!チョコは瑠羽のとこで作ったらすぐバレるからあたしんちでやろう、作り方教えてあげる。材料揃えないとね、どんなのがいい?」
そんな、矢継ぎ早に言われても~
「何度か練習しないとでしょ、早速始めるよ!土曜は部活ないの?確認して」
「…うん、わかった」
舞衣の勢いに押されて、今年のバレンタインには家族でケーキを食べる日、ではなくなりそう。
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