デートの約束はしたものの

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デートの約束はしたものの

舞衣の家から戻ると、いつも通り駿が来てて、夕飯の支度を手伝ってたのかと思ったら、駿が作ってた。 「あれ?ママは?」 「間に合わねーってこもったまま」 スープかな、お玉動かしてるのが見える。 「ごめんねやらしちゃって、すぐ着替えてくる」 「急がなくていーよ、もうできるから」 「ありがと」 ライターのママは、締切が重なると部屋から出てこなくなる。 それは身体に悪いから少しでも動け、って、あたしよりも駿の方がママに注意してくれて、ママは駿の言うこと素直に聞くから、どんなに詰まっててもご飯は一緒にリビングで食べる。 駿が作ってくれたスープをよそいながら、土曜に部活があるか聞いてみた。 「こないだの雪でグランド状態わかんねぇから、なし」 ほんと?ラッキー! 「そうなんだ、そしたら」 出かけない?って言いかけたらママが来て、疲れた顔してるけど、いい匂い~って少しホッとして見える。 「だいじょぶっすか、無理したらまた傷めちゃいますよ」 「ん、首肩がちがち」 ママが言うと、駿がママの肩をもんで、こってますねぇって息子みたい。 「駿ちゃんってほんとお料理上手ね、ありがと、助かった」 両手を合わせてごちそうさまをしたママは、ごめん、片付けお願い、と言ってまた部屋へ。 「ライターって家でできっからラクそうだけど、大変だよな」 「締切終わるとママ、ぼろぼろだもんね、駿のおかげでほんと助かったよ、おいしかったし、ありがとう」 「世話になってるし、こんくらい…てか俺、料理好きみたいだぞ」 「おいしいもん」 あ、っと、笑ってる場合じゃなかった。 「瑠羽、さっき言いかけたのってなに」 うわ、駿、覚えててくれたんだ、嬉しい。 「んっとね、部活ないんなら、出かけないかなーと思って」 「どこに?」 「水族館、とか」 駿とふたりで出かけたことは何度もあるから、出かけたことのない場所で、多少寒くても楽しめそうな、できればデートっぽい非日常間の空間…で、舞衣と思いついたのが水族館。 「水族館か、しばらく行ってねぇな、いいよ」 ふーっ、OKもらえた、よかった… 「で、誰と行くの」 え? 「俺と瑠羽と、他には?」 ねぇ駿、土曜日ってバレンタインだよ、なんでそうなるの… やっぱり脈なんか全くなし、ってことかぁ。 「あたしとふたりじゃ、だめ…?」 雪の日に手をつないだけど、駿には特別な感情がなかったってこと、これでもうわかってしまった。 「全然?ふたりの方がラクだよな、せっかくなら開園に合わして行こ」 あたしのフクザツな気持ちなんてわかってないんだろーな、駿はぱくぱく食べてる。 「あ、うん、いいよ、あっ、あのさ」 「ん?」 「現地で待ち合わせ、しない?」 その方がよりデートっぽいよ、と舞衣に教わったように聞いてみる。 「え?同じ家から同じとこ行くのになんでわざわざ?めんどくさくね」 あっさり却下。その方がデートっぽいから、なんて言えるわけもなく 「たまには気分かえて、とか思ったけど…」 うまい言い訳が思いつかない。 「いーじゃん、家から一緒で」 「うん、だよね、じゃ、土曜日よろしくね」 「ん、楽しみにしてるわ」 デートっぽかったら緊張しちゃうから、少しでもデート感ない方が気楽かな、もうデートでもなんでもないただのお出かけだけど、と思いながら洗い物して、そのままあたしの部屋でふたりで勉強。 その間に舞衣から連絡が来て、経緯を伝えると <出かけたらたぶんデート感薄れるから、ちょっとでもデート感出したかったら別々に行く方がいいのに…ま、仕方ないか>と舞衣。 ねぇ舞衣、駿には特別な気持ちがない、ってこと、もうわかってしまったんだけど。
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