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瑠羽、初めてのチョコ作り
「舞衣、これくらいでいい?」
「んー、もうちょいかな」
「わかった」
バレンタインはあさって。
また雪が降ってきて短縮授業になったから、早速舞衣の家でチョコ作り。
「うん、おいしそう、瑠羽うまいじゃん、なかなかのセンスよ」
「はぁぁ、疲れたー」
慣れないことはするもんじゃないや、しかも…駿にはあたしへの気持ちなんてサラサラないって気づいて、やる気も減るし。
「おっつかれさん、ほんとおいしいから、食べてみたら?」
初めて作ったブラウニーを少しかじってみた。
「あ、これきっと駿の好きな味!舞衣ありがと!!」
「あはは」
え?なんでお礼言ったのに笑うの?
「瑠羽ってほんとに駿が好きなのね。このお菓子がちょっとでも役に立ちますよーに!」
プレゼント用にキレイにラッピングしたブラウニーを目の前に、舞衣が拝んでる。
「舞衣?もういいよ、聞く前にわかっちゃったし」
正直、あーあ、っていうのはぬぐえない。けど、せっかく出かけるなら楽しもうって思ってるのは本当。駿がいうように、すごく久しぶりの水族館だし、駿とふたりだし。ていうか逆に、望みがないから余計なこと考えずに楽しめそう。
「瑠羽、この機会に吹っ切っちゃう、ていうのもアリだよ」
「…そーだね、もう何年片思いしてんだ、っての」
ラッピングしたブラウニーを見つめる。
「雰囲気でどうなるかわかんないよ?瑠羽のよさ、新たに気づくかもだし」
「もういいかぁ、って思うのにね、往生際悪いよあたしも」
「でもさ、いくら産まれる前から一緒で家族同然の幼馴染だとしても、好意がなかったら、ここまで仲良くなくない?」
「…あー、そうかもしれないけど」
「似たような境遇の子、他にいないし…直接ぶつかるしかないか。演出次第ね、頑張れ瑠羽」
舞衣からのエールをもらって帰り道。
ケータイ見ると、駿からの着信と何件ものメールが来てる。
雪なのにどこうろついてんだよ、って。
こんなふうに優しさ発動するから、いつまでも諦めきれないんじゃん…
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