悩める瑠羽

1/1
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

悩める瑠羽

「はぁ…」 昨日のこと思い出すと、ため息が出ちゃう。 図書委員の仕事してたら雪が降ってきて、積もる前に帰ろうとしたら昇降口でばったり、部活から戻る駿に会って。 一緒に帰ろって言われて、雪で濡れて冷て~!ってウエアから制服に着替える駿を、教室で待ってた。 外出たら雪がうっすら積もってて、転びそうになったあたしにすっと手を伸ばして、滑んなよ、転ぶんじゃねーぞ、って気遣って手をつないでくれた駿。 駿の手、大っきくてあったかくて、すっごくドキドキして…守られてる、って感じてた。 あれってほんとに、ただの気遣いだけだったのかな。 あたしのこと、ちょっとは意識してるような気がしたのは思い込み? …バレンタインが近いから、そう思いたいだけなのかな。 さっきからベッドでゴロゴロ、同じようなこと考えてる。 付き合ってた先輩と別れたって言う駿の、つないでくれる手はとってもあったかくて。 あのあったかさは私への気持ち?なーんてそんな都合いいわけないよね、と思いながら、駿への気持ちに蓋してきたのを外そうかどうしようか、悩んでる。 「はーっ、こんなんじゃ何も手につかない」 ふー、と深呼吸してベッドから起き上がった。 今日は火曜日、バレンタインデーは土曜日。 バレンタインデーにはいつからか、ママとあたし、駿と駿のママとで、うちでケーキを食べる日になってる。 いつも駿がお世話になってるからと、駿のママがケーキを買ってきてくれるの。 今年もたぶん、そう。 駿に彼女がいたら、違うだろうけど。 「瑠羽~ちょっと来て~」 ママに呼ばれて行くと 「駿ちゃん、今日は来ないんだっけ」 カレーのいい匂いがしてる。 「今日はママいる日じゃない?」 カレンダーを見やる。 駿のママは病院勤務。夜勤だと、駿はウチで晩ごはんを食べて、お風呂も寝るのもウチ。 中学生になったからひとりで大丈夫、と駿のママに言われたけど、なにかあったらって気になるより、そばにいた方が安心だから、とママが話して、駿のママが夜勤のときは、引き続きウチで過ごしてる。 小っちゃい頃からしょっちゅうのことで、ウチには駿のタオルも布団もあるの。 で、駿が来る日には日付にマルしてるけど、今日はない。 「たまーに来ることあるじゃない?」 勤務交代したり、出勤することはある。 「カレー作りすぎちゃったんでしょ、食べるか聞いてみる?」 「うん、お願い」 駿への気持ちがグラグラしてるけど、しょうがない、電話してみる。 数回コールしたけど出ない。そろそろ6時だけど、寝てるのかな。 「…瑠羽?」 寝ぼけた声でやっと出た。 「ごめん駿、寝てた?」 「ん…勉強してたハズなんだけどな」 えらいじゃん、苦手な勉強頑張ってたなんて。 「起こしてくれてありがと」 「んっとさ、もうご飯作った?カレー作りすぎたんだって」 「まじ?行く」 あれ?ママいるんじゃないの? 「あ、今日違ぇか」 「ママは?いないの?」 「待って、見てくる」 ケータイ越しに、駿とママの会話が聞こえる。 「な、まだ作ってねーって、行ってい?」 「どーぞ、待ってるね」 んー、いつもと変わんない…やっぱり、あたしの思い過ごし?
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!