15人が本棚に入れています
本棚に追加
悩める瑠羽
「はぁ…」
昨日のこと思い出すと、ため息が出ちゃう。
図書委員の仕事してたら雪が降ってきて、積もる前に帰ろうとしたら昇降口でばったり、部活から戻る駿に会って。
一緒に帰ろって言われて、雪で濡れて冷て~!ってウエアから制服に着替える駿を、教室で待ってた。
外出たら雪がうっすら積もってて、転びそうになったあたしにすっと手を伸ばして、滑んなよ、転ぶんじゃねーぞ、って気遣って手をつないでくれた駿。
駿の手、大っきくてあったかくて、すっごくドキドキして…守られてる、って感じてた。
あれってほんとに、ただの気遣いだけだったのかな。
あたしのこと、ちょっとは意識してるような気がしたのは思い込み?
…バレンタインが近いから、そう思いたいだけなのかな。
さっきからベッドでゴロゴロ、同じようなこと考えてる。
付き合ってた先輩と別れたって言う駿の、つないでくれる手はとってもあったかくて。
あのあったかさは私への気持ち?なーんてそんな都合いいわけないよね、と思いながら、駿への気持ちに蓋してきたのを外そうかどうしようか、悩んでる。
「はーっ、こんなんじゃ何も手につかない」
ふー、と深呼吸してベッドから起き上がった。
今日は火曜日、バレンタインデーは土曜日。
バレンタインデーにはいつからか、ママとあたし、駿と駿のママとで、うちでケーキを食べる日になってる。
いつも駿がお世話になってるからと、駿のママがケーキを買ってきてくれるの。
今年もたぶん、そう。
駿に彼女がいたら、違うだろうけど。
「瑠羽~ちょっと来て~」
ママに呼ばれて行くと
「駿ちゃん、今日は来ないんだっけ」
カレーのいい匂いがしてる。
「今日はママいる日じゃない?」
カレンダーを見やる。
駿のママは病院勤務。夜勤だと、駿はウチで晩ごはんを食べて、お風呂も寝るのもウチ。
中学生になったからひとりで大丈夫、と駿のママに言われたけど、なにかあったらって気になるより、そばにいた方が安心だから、とママが話して、駿のママが夜勤のときは、引き続きウチで過ごしてる。
小っちゃい頃からしょっちゅうのことで、ウチには駿のタオルも布団もあるの。
で、駿が来る日には日付にマルしてるけど、今日はない。
「たまーに来ることあるじゃない?」
勤務交代したり、出勤することはある。
「カレー作りすぎちゃったんでしょ、食べるか聞いてみる?」
「うん、お願い」
駿への気持ちがグラグラしてるけど、しょうがない、電話してみる。
数回コールしたけど出ない。そろそろ6時だけど、寝てるのかな。
「…瑠羽?」
寝ぼけた声でやっと出た。
「ごめん駿、寝てた?」
「ん…勉強してたハズなんだけどな」
えらいじゃん、苦手な勉強頑張ってたなんて。
「起こしてくれてありがと」
「んっとさ、もうご飯作った?カレー作りすぎたんだって」
「まじ?行く」
あれ?ママいるんじゃないの?
「あ、今日違ぇか」
「ママは?いないの?」
「待って、見てくる」
ケータイ越しに、駿とママの会話が聞こえる。
「な、まだ作ってねーって、行ってい?」
「どーぞ、待ってるね」
んー、いつもと変わんない…やっぱり、あたしの思い過ごし?
最初のコメントを投稿しよう!