売られた身

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「ったく、どうするんだよ。こんなに痩せていたら売り物にしたくても無理だろう」 「そんなこと言ったって。どうせこの子は目を“見えないように”しなけりゃいけないんだから使い物にはならんだろ」 「そうは言ったってなぁ。別に目を閉じさせたままでもいいんじゃないか?ここにおいてたってしょうがないだろう」 既にここへ連れられて数か月が経過した。 瞼を布で強制的に閉じた状態でつばきは埃と土の匂いが広がる汚い小屋に両手首を縛られ横たわっている。 視界が奪われた状態のせいか、嗅覚と聴覚が異常に敏感だ。 つばきは、数日に一度の食事のせいで既に自ら起き上がるほどの力もなかった。 徐々に訪れるであろう、死を感じながらも逃げることも諦めていた。 昨日はひどい雨だった。雨風を凌げるような小屋ではなく、外の気温や天気をダイレクトに受け取ってしまう。 ここへ連れられた理由は複雑だった。 つばきの母親は裕福な家庭で育った。名家ということもあり何不自由なく育ったが、一般人であるつばきの父親と出会ったことで“駆け落ち”をした。 つばきの父親は農村地で生まれた所謂庶民だった。母親には親の決めた相手がいたのにも関らず、父親とともに生きることを決意し家を出た。 しかし、運は味方をしなかった。父親はすぐに病で倒れ、生まれたばかりのつばきを残してこの世を去った。 つばきの母親も体が弱く、働くことが出来なかった。仕方がなく母親は実家へと戻ることになるが、一度でも家の決めたことに逆らった事実は重かった。母親の実家である西園寺家では肩身の狭い思いをしていた。 食事も差別され、着るものも古い着物ばかりだった。 しかし、それでもつばきたちは食事を与えられるだけで満足だった。感謝をしていた。 「はぁ…どうすんだよ、私たちだって大したお金貰っているわけじゃないんだ」 「そうだよなぁ。確か今日清菜様がいらっしゃるはずだ」 「そうだった。その時にどうするか相談しましょう。いずれ死ぬなら最後に金くらい稼いでもらわないと」 まだ聞こえる話し声につばきは涙を浮かべていた。 もちろん彼らには見えはしない。
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