17253人が本棚に入れています
本棚に追加
全て打算的に生きてきた翔にとってこの感情は初めてだった。
しかし、同時に京は大切な友人だ。
この感情に蓋をすることが一番いい選択なのだ。
「そう思うんだ?」
「あぁ、そう思っている。そして…―その相手は、つばきだと思っている」
「…なるほど。どうしてそう思うの?」
「否定しないのだな」
「そこはノーコメントで。どうしてそう思うの?」
「単純な話だ。俺はお前の友であり一番の理解者だと自負している。分かるに決まっているだろう。だが、お前は昔から本心を隠すのが異常にうまい。“気に入っている”だけの可能性もあったし、俺だってその方がよかった。でもお前のつばきに見せる目は、本気の目だ」
はは、と乾いた笑いが漏れる。
「翔、お前は俺の大事な友人だ。だが、つばきだけは渡せない」
「誰も取ろうとなんて思ってないよ。ましてや、つばきちゃんは京君に夢中じゃないか」
翔は両手を床につけ、背中を反らせるような恰好をして天井を見上げた。
別にどうこうしようなど思っていない。
(僕にとっては、大事な人なんだ。京君もつばきちゃんも)
「大丈夫だよ、俺は本心で京君たちの結婚を祝っているし、喜んでいる」
京の視線を感じ、翔は京を見据えた。
「そうか。俺はお前とこれからも友人でいたいと思ったからいつかはちゃんと話そうと思っていた」
「随分心配性になったね。僕はこれからも京君の友人であることには変わりないよ」
最初のコメントを投稿しよう!