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しかし、京も当然のように言う。
「ダメだ、これはお前に買ってきたようなものなんだ。つばきが食べろ」
「でも…とっても美味しいと有名なお饅頭ですよ。京様も食べたことがないのでしたら先に京様が食べるべきです」
「なんだ、最近はやけに頑固になったな。俺はいらん、そもそもつばきは甘いものが好きだろう。俺はそんなに好んでは食さない」
翔の目の前で“いちゃつく”二人をみると自分では絶対につばきを奪うことが出来ないと思い知らされる。
もちろん、奪う気は一切ないが。
「半分こ、すればいいんじゃない?」
「なるほど!翔様さすがです」
「いやいや、誰でも思いつくでしょう」
つばきは嬉々として皿の上の饅頭を手にする。どうやら本当はとても食べたかったようだ。
京は大切で大切で仕方がないというような目をつばきに向けている。
「食べさせてやろうか」
「いいえ!結構です。子供じゃないので」
「京君、随分笑うようになったね」
「そうか」
「そうだよ」
京は元々そこまで感情を表に出すタイプではなかった。
それなのに、つばきの前では本当に幸せそうに、嬉しそうに笑っている。
親友のそんな顔を見ることが出来て素直に幸せだ。
「二人とも、結婚おめでとう」
翔の言葉に二人の目が同時にこちらへ向く。
つばきは心底嬉しそうに笑い「ありがとうございます」と言った。
好きな人と好きな人が結婚するのだ。
そんな幸せなことはないだろう。
番外編⑤END
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