売られた身

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確かに、つばきが緋色の瞳で誰かを見つめたときにおかしなことを口にした。 母親ですらつばきの目が呪われたものではないかと疑った。 西園寺家は元々つばきたちを良くは思っていない。そのため、これをきっかけに西園寺家からは遠く離れた農村地で暮らすように命じられた。 少しばかりの金銭の援助は保証してくれたが、それでは足りず母親は体が弱いながらに働きに出てつばきを養った。 つばきが10歳になった時、母親はつばきに訊いた。緋色の目で見た人間を殺すことは出来るのか、と。 つばきは母親から緋色の瞳で人を見てはならない、このことは絶対に他人に話してはならないと言ってきかせていたから一切その話題を口にすることはなかったのだ。 つばきは答えた。 『その人をしっかり見ようとすると、違う映像が浮かんでくるの。どうしてかはわからない』と。 昔、他にも同じようにして“見た”人がいたことも母親に話した。しかしその人物たちは死んでいないと。 母親は気が付いた。つばきには人を死に追いやる力はない。あるのは“未来”を見る力だと。 安堵したのと同時に不安に駆られた。この力はよくない人たちに利用される可能性がある。 つばきは母親から絶対にこの力のことは他人に話してはならないと言われた。
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