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あのお祝いの日から夏凛さんの助手をして
2年が過ぎていた。
僕の仕事は、事務所の掃除とか、買い物とか
何だか、お手伝いさんのような仕事
ばかりだった。事務所の中は、
絶えずビールの空き缶
ワンカップだとかウイスキーの空き瓶
だとか毎日のように転がっている。
「夏凛さん、本当に程々にしないと
身体壊しますよ」いつも言っているんだけど、
「私の場合、呑まない方が身体
壊しちゃうんだよ」なんて言い返す始末、
それに、いくら呑んでも夏凛さんが
酔っぱらっている所を一度も
見たことがない。
給料は、月に10万円しかもらえない、
だけど、夏凛さんは
「缶助!おまえいつも同じような
服着ているな、これで好きな服買ってきて、
小綺麗にしてろ!」
といって、何万円もよこしたり
「缶助!髪伸びて来たな、さっぱりしてこい」
と言ってまた何万円も出してくる
いちばん驚いたのが、「缶助!おまえ買い物、
おせぇ~んだよもっと、早くしろよ」
などと言ってきた時に
「歩いての買い物ですからそれなりに時間は
かかりますよ」
と少し反抗っぽい事をいったら、翌日、
夏凛さんが僕を呼んで、ビルの駐車場に行き、
「これからこれを使え、
缶助にやるから、これで買い物なんかも少しは
早くなるだろ」
と言っていた。僕の目の前には、
真っ赤なホ〇ダのNSXが止まっていたんだ。
「これって、2千万円以上する車・・・」
あれには、僕もおしっこちびりそうになった。
「こんな高級車!僕には
運転できませんよ!!」
と言ったら、じゃあ練習しろと言ってキーを渡された。
「何で!こんな高額な車なんですか!?」
「だって、歩きで買い物が遅いから早くするには
どうすればいい?と聞いたら
じゃあ、この車なら早いですよっていったんだもん」
「いったんだもんって、夏凛さん!
小学生じゃないんですから!もっと・・・」
「あ~っ!!うるせ〜んだよ、いちいちお前は!
缶助は運転の練習すればいいんだよ!!」
しまいには怒り出す始末・・・
なんだか、夏凛さんは一般常識が通用しないと言うか
一般人ではないんじゃないかと思えて来たんだ。
探偵の仕事など、月に数回しかないのに、どこから
お金が出てくるのか、全く僕にはわからない、
というか夏凛さんはおしえてくれない。
引き出しに、お金が入っていたとか、拾っただとか、
宝くじ当たっただとか、そんなことしか
言わないんだ。金銭感覚が、僕とは全く違う。
まあ僕も、休みをもらって夏に新潟の実家に
帰った時に真っ赤なNSXで帰ったら、
両親も、姉貴も、オッたまげていた。
この時も夏凛さんは、
「両親にお土産でも買っていけ」と30万円も
僕にわたしてくれて
「こんなに、いりません」と言ったら
「私が恥ずかしい思いをするんだぞ、よく考えろ!」
とか言っていたけど・・・やっぱり僕とは次元が違う
人なんだと思った。
本当に、夏凛さんは解らない人だ。
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