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時刻も夜の7時になろうとした時
きんちゃんじいさんが
手土産をたくさん抱えて現れた。
「利ちゃ~ん!!きたぞい」
「お~っ!!猫間のおじいさん、よう来てくれた」
おばあさんが、出迎えた。
「土産もってきたで、うりの肉とおしんこと
豆腐作ったで持って来た」
「ありがとさん、上がってくれや」
「わしも自分の家から出るのは何年振りかの~
嬢ちゃんたちのお陰じゃな」
「そうじゃな、わしだって同じじゃよ、あんちゃんたちが
泊ってくれて賑やかじゃった。ばあさんも
喜んでるでな、特にあの若いあんちゃんが、いてくれて
大助かりしているでの」
猫飼じいさんがニコニコしながら缶助をみていた。
「何でしたら、置いて行きましょうか」
缶助を横目で見ながらじいさんに言った。
「ちょっと!夏凛さん!!」
助けを求めるようにかっちゃんを
見ていた缶助だった。
食卓に笑いが溢れた。
「昔は、子供たちや孫が来てくれたんじゃが、
今は、わしたちにここを離れて「東京に来い」
なんと言っておる」
「わしとこも、利ちゃんとこと一緒じゃよ
子供達も東京に行って、わし1人で心配じゃから
こっちに来いなどとぬかしよる、生まれ育った
この村はよう離れん、うちのが、こん土地で
眠ってるからな、わしもここで死んで行くんじゃ」
寂しそうに、猫間じいさんが話す。
「しかし、この村にはいい温泉と美味しい
野菜がありますよね。
それを生かせないものでしょうか、本当に
勿体ないですね」
私の顔を見ながら「何とか出来ないものか」
と言わんばかりにかっちゃんが
目線を送ってきた。
「そうね、捨てがたいわねこの村は」
おばあさんが、猫間じいさんが持って来てくれた
豆腐、うり肉と昨日の雉肉を焼いてきてくれた。
「さあ、みなで呑んで、食べれ!じいさんが
持って来た肉焼けたで、
缶ちゃん!猫間じいさんが
持って来た肉美味しいで食べてみろ」
おばあさんが、缶助にうり肉を皿に取って
渡した。
缶助もうり肉は初めてで、うまいうまいと
舌鼓をならしていた。
大勢で食べる食事はやはり美味しい。
みんなで呑んで食べて時間のたつのも
忘れていた。
猫間じいさんが腕時計を見て、
「おっと、こんな時間か!いっぺい呑ませてもらって
ごちそうになって、悪かったな、利ちゃん、
お恵ちゃんわし、ここらで帰るで」
「そうけ、気~つけてな、灯りあるか?」
「だいじょぶだ~!息子が買ってくれた
懐中電気があるで、これ驚くぐらい明るいんだぞ」
全員で猫間じいさんを玄関外まで送った。
じいさんの懐中電灯の明かりがじいさんの
家に着くまで外で見守っていた。
猫間じいさんが家に入ったのを見届けて
皆、家に入った。
そして、今一度呑み直しと言うことで、
お恵おばあさんも含めてもう一度
乾杯をした。
その夜は、それぞれの箸が休まることなく
舌鼓が聞こえていた。
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