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ある日、僕はいつものように事務所を
掃除していた。その時、珍しく電話が
鳴った。
面倒くさそうに、夏凛さんがぶっきらぼうな
言い方で電話に出た。
「はい、野辺探偵事務所で・・・・・・」
夏凛さんの声が「で」で止まってしまった。
「えっ!もしかして、かっちゃん!
かっちゃんなの?!」
夏凛さんの声のトーンが一気に上がったのを
僕は聞き逃さなかった。
そして、暫く昔話でもしているかの
如く話をしていたが一気にまた、
声のトーンが低くなった。
「あっ、そう・・・わかった、あさってね、
金沢の駅でね、うん、わかった・・・
それじゃあ、あさってに会おうね」
電話を切ったと思ったら、いきなり僕の
名前を呼んだ。
「缶助!おい!缶助!!
あき缶助ぇ~~~っ!!!」
台所にいて僕は「はい、一回呼ばれれば
解りますから・・・って、今、あき缶助って
いいませんでした?夏凛さん!」
「いや、私は缶助~って呼んだだけよ❤」
「そんな、ハートマーク付けたって、駄目ですよ
今、絶対あき缶助っていったもん!」
「言ったもん!って小学生じゃないんだから、お前!」
露天商の投げ売りのように名前を呼ばれて、
ちょっとむかついた、僕だった。
「大至急、東京発ー金沢行きの新幹線の
切符を二人分取ってこい、もちろん、
グランクラスAでな!
間違えるなよ絶対にグランクラスAだぞ!!
お昼ごろに金沢に着ける奴でな」
あと、おまえもスーツを新調してこい、
私と一緒に行くんだからそんな、
ジーパン、Tシャツなんかじゃだめだ!
良いスーツを買ってくるんだぞ!」
と言って、僕に1万円札の束を渡してくれた。
パット見た感じ4~50万円はある感じだ。
最近の僕は、慣れっこになって来て
大体の金額が解るようになってきている。
「わかりました、直ぐに行ってきます・・・
夏凛さん、高級なスーツって何処に行けば
買えるんですか?」
「そんなこと、自分で考えろ!
スーツ売り場に言って30万円くらいの
スーツが今すぐ欲しいと言えば
店がなんとかするだろ!直ぐ買える所で
買ってくれば良いんだよ!
さっさと行って来い!!!」
「はいっ!、わかりましたっ!!」
と切れ気味に返事をして車で東京駅に
向かった。
駅に着き金沢行きのグランクラスAを
2枚購入した。なんと、1人27400円もする、
2人分で54800円だ!!自由席なら、
グランクラスの一人分の料金で
二人分買えるのにと思いながら、
グランクラスを買ったのだった。
北陸新幹線、東京発金沢行き、
はくたか557号
9時32分発~12時28分着になった。
切符は、購入した、あとはスーツ。
だけど僕にはどんなのが良いのか
全く分からなかった。
やたらに買って行って夏凛さんに駄目だし
くらいそうで怖かった。
なので、買わずに帰ったのだった。
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