0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただい『メリィ”ィ”ィ”ィ”ィ”クリスマァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ス』
パーンパーンとクラッカー。
「………………………ただいま」
『うん、おかえり』
ニカッと笑う全身灰色スウェットマン。
………靴下重ね履きしすぎだろ、なんだ「素の馬ん」って。スノーマンってことかよどこに売ってんのそれ?
「……めりーくりすます」
『うん、メリクリ』
「……………ゔぅ”、ぅあ”あ”あ”あ”」
『あー泣くな泣くな笑』
今日は12/24。クリスマスイブです。
社畜の私は今日も出勤です。
……………あ、今12/25になりました。
:
「…………ちょっと待って、これクリスマスツリー?」
『うん、これクリスマスツリーじゃないことある?』
「いや…………クリスマスに飾られてる緑の木らしきものは大体クリスマスツリーだけども」
『だべ?』
泣き止んだ私の背中をぐいぐい押して(すごく肩こりに効いた)連れて行かれたリビングに鎮座する、ブロッコリー。
私が「グラタンに入れよ!安いし!」って木曜日に買ってきた、ブロッコリー。
買ってきたあのサイズ感の、ブロッコリー。
たぶん生の、ブロッコリー。
ケチャップとマヨネーズで彩られ、白い平皿の上に立つ、ブロッコリー。
そう、ブロッコリー。
『ごめん、来年はでっかい本物買うからさ』
「……………それ去年も一昨年も聞いた」
『テヘペロ』
かわいく首を傾げて舌をのぞかせる目の前の大男から反省の色なんてもちろん見えない。
「………………私はずっとこれでもいいけどなぁ」
『あ、そう?場所取らないし金かかんないし食べられるしいいよね、これ』
「そーだねーー転職活動頑張ろーねーー」
『はーい』
右手を耳にピッタリつけ、シャキーンと伸ばすモーション付きでヘラヘラ笑ってる。
あ、待ってやばい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
[バリバリサラリーマンとの生活]
・終電ギリギリに帰ってきても家に誰もいない。
・ご飯もない。
・お風呂も沸いてない。
・洗濯掃除皿洗いその他諸々がたんまり。
・会えない。
_人人人人人_
>会えない<
 ̄Y^Y^Y^Y ̄
おぁ、待って待って待って待って!?!?!?!?!?
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
lqっhwけおd!?!?!?
vqkwkcjc!?!?!?!?!?
べjしskslksbっd!?!?!?!?
(バリバリに働いてんのやばい、ブルーライトカットメガネ超似合うよかっこよ……………)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「………………………うぅぅぅ、たんまたんま、前言撤回、やっぱりまだそのままでいて」
急に不安になってきて(やべえ、バリバリサラリーマン……尊い)ガシッとしがみつく。
……あたしゃトトロにしがみつくメイちゃんか。
『おわっ、わーったわーった』
大きな手で私の頭を撫で、優しく抱きしめてくれるこのヒモ野郎の1人や2人くらい養ってやれるわ、コンチクショウ!!
あぁ、ほんとに好き。
「ねぇ、キッチンからペーパータオルとって来てくんない?」
『?いいけど』
私はシャンパンに結んであった赤いリボンを持ってくる。
「ん、ありがと」
『いーえ、どうすんの?これで??』
「まぁまぁ、見てなって」
私は、ブロッコリーを手に取ってキッチンペーパーで包む。
そう、ブーケのように。
「ちょっと持ってー」
『あいよ』
仕上げにリボンを結んで(よかったぁ縦結びになんなくて)完成。
『おおーすげぇ』
感心してる場合じゃないぜ?お兄さん?
「私が一生養うからお嫁に来ない?」
『は?』
「結婚しよう」
『え?』
「愛してる」
『………俺も!!!愛してる!!!お嫁に行くわっっっ!!!』
「おわっ!?重い!!潰れる!!!」
『私からの愛よ!!!え、むっちゃうれしい』
ソファに押し倒される。
…ん?太った?
『でもさ、それは俺が言うから。も少し待っててな?』
あぁ、愛おしいったらありゃしない。
「………うん、待つよ。」
来年のクリスマスツリーはブロッコリーじゃなくてサボテンかな?
私も貴方もサボさん好きだしね。
“小さな幸せ”→“枯れない愛”
最初のコメントを投稿しよう!