地球へ

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 目を開けると操縦席(コックピット)は激しい警報音に包まれていた。モニターには縮退炉#1が消滅した表示が出ている。ラクティアのコースは太陽から大きく外れている。太陽との衝突回避は成功した様だ。  そして私は機体の向かっている方向に目を向けた。そこには……。 「あれは地球……? やったわ、ビル。地球の近くに跳躍(リープ)アウトしたみたい」 「でもミク、時間がおかしい」  ビルの声に時間表示を見るとエラーになっている。天測カメラの情報から各惑星の位置を確認し、現在の時間を推測する計算を走らせる。すると……。 「えっ? 10万年前……。跳躍(リープ)と同時に時間も遡ったの……?」  衝撃を受けた私はモニターに現れたもう一つの警報に目を見開いた。 「地球との衝突コースに……。相対速度は秒速900キロ? 縮退炉#2全力運転。重力制御減速を!」  地球までは既に1万キロを切っている。縮退炉一機の減速で間に合うの?  ほんの二十秒で、F52は地球の大気圏に突入した。空力加熱で機体が真っ赤に光っている。そしてF52は最終減速が間に合わず、秒速100メートルで激しく地面に叩きつけられた。
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