初めての宇宙戦闘

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「まだ、甘いわね……」  敵の機動兵器(パワードスーツ)の動きを無視して、F52を敵艦(ソチ)へ加速させる。敵艦(ソチ)との相対速度は秒速四十キロに達している。攻撃機会(アタックタイミング)は一瞬だ。  機体を敵艦(ソチ)との衝突コースに載せると、右手のレールガンで主機(メインエンジン)を、左手で艦橋(ブリッジ)に狙いをつける。左右のレールガンを同時に発射し、下向きに80G掛けて、敵艦(ソチ)の下を擦り抜けた。後方で敵艦(ソチ)が激しい閃光に包まれて轟沈するのが見える。  高度が九十キロに下がって機体が大気上層との摩擦で赤く光っている。  上方へ旋回すると、母艦を沈められた二機の新型が物凄い勢い迫ってきている。敵のレールガンのロックオン警報が操縦席(コックピット)に鳴り響く。  その刹那、操縦を調和(ハーモナイズ)モードに切り替えた。このモードは首のカチューシャを通じて、機体と完全に同調(シンクロ)する事が出来る。目を瞑っていても機体のカメラの映像がそのまま頭の中に浮かんでくるし、機体は自分が考えた方向へ機動(マニューバ)してくれる。射撃も頭の中で撃てと念じるだけだ。  響き渡るロックオン警報を無視しながら、会敵コースへ強引に進路を捻じ曲げた。二機から放たれたレールガンの弾丸を数メートルだけ機体を横滑りさせて躱す。  機体を反転させた瞬間、二機の敵と擦れ違った。そのまま左右のレールガンを発射した。弾丸は敵機の縮退炉を貫通し、二機は巨大な閃光に包まれた。  母艦(スワン)からの無線が届く。 「ミク。素晴らしい戦果だ。帰還してくれ」 「了解です」  激しい重力制御での機動(マニューバ)を終え、調和(ハーモナイズ)モードを終了すると自分の目に視力が戻って来た。  再び宇宙から見た蒼い地球は、先ほどの死闘が無かったかの様に美しく輝いていた。
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