34人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「まだ、甘いわね……」
敵の機動兵器の動きを無視して、F52を敵艦へ加速させる。敵艦との相対速度は秒速四十キロに達している。攻撃機会は一瞬だ。
機体を敵艦との衝突コースに載せると、右手のレールガンで主機を、左手で艦橋に狙いをつける。左右のレールガンを同時に発射し、下向きに80G掛けて、敵艦の下を擦り抜けた。後方で敵艦が激しい閃光に包まれて轟沈するのが見える。
高度が九十キロに下がって機体が大気上層との摩擦で赤く光っている。
上方へ旋回すると、母艦を沈められた二機の新型が物凄い勢い迫ってきている。敵のレールガンのロックオン警報が操縦席に鳴り響く。
その刹那、操縦を調和モードに切り替えた。このモードは首のカチューシャを通じて、機体と完全に同調する事が出来る。目を瞑っていても機体のカメラの映像がそのまま頭の中に浮かんでくるし、機体は自分が考えた方向へ機動してくれる。射撃も頭の中で撃てと念じるだけだ。
響き渡るロックオン警報を無視しながら、会敵コースへ強引に進路を捻じ曲げた。二機から放たれたレールガンの弾丸を数メートルだけ機体を横滑りさせて躱す。
機体を反転させた瞬間、二機の敵と擦れ違った。そのまま左右のレールガンを発射した。弾丸は敵機の縮退炉を貫通し、二機は巨大な閃光に包まれた。
母艦からの無線が届く。
「ミク。素晴らしい戦果だ。帰還してくれ」
「了解です」
激しい重力制御での機動を終え、調和モードを終了すると自分の目に視力が戻って来た。
再び宇宙から見た蒼い地球は、先ほどの死闘が無かったかの様に美しく輝いていた。
最初のコメントを投稿しよう!