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署に戻ると柏崎さんは井澤に動画データを転送した。
「ちょっとこの子のこと調べてみてもらっていい?」
「え?はい。ちょっと待ってくださいね」
「ああ、俺、今日から入った柏崎ね。よろしく」
「はい、井澤です。よろしくお願いします。・・・・・そうですね・・・リストにいるかな・・・あっいますね『杉村太子17歳』ですね」
「17歳?高校生?見えなかったなぁ」
黒田は東京の高校生の大人っぽさに驚いていた。
「この子、なにか問題でもあったんですか?」
「いや、勘」
「あー、でも・・・ちょいちょい学校で問題を起こしているみたいですね・・・補導も二回されてます」
「ふーん・・・補導されてるかぁ・・・二回もねぇ・・・」
「気になりますか?」
「うんちょっとね、ありがとね」
柏崎はそう言うと自分の席について何やら考え事をしていた。
しばらくすると、席から立ち上がった。
「あっ柏崎くん、どっかいく?歓迎会やろうと思ったんだけど」
南田さんが柏崎を呼び止めると
「あ〜まじっすか?明日でもいいですか?ちょっと行くところあるんで」
「オッケ〜、じゃあ明日の夜空けといてね〜」
「はい、あざ〜す」
柏崎が部屋から出ようとした時、黒田が急いで準備をして
「俺も行っていいですか?」
「え?いいけど・・・ラーメン食いに行くわけじゃないよ?」
「え?違うんですか?」
「あはは」
「さっきの子に会いに行くんですよね?」
「え?まあ・・まだいるかどうかわかんねえけど」
「俺初めて生で『刑事の勘』ってセリフ聞いてちょっと感動しました」
「あはは、まあ・・・勘だけじゃないんだけどね」
「え?」
「あの子、あの時不正通信をしてたんだよな、しかも同時に何個も」
「不正通信?」
「あー、わかりやすく言うとハッキングだね」
「え?スマホで?」
「うーん、正確言うとスマホは通信用に使ってるだけで、ハッキング自体はあの子が、あの子のAIの中で処理してたんだけど」
「なんでわかったんですか?」
「俺もあの坂本くんだっけ?みたいに見ただけでも分析できんだよね、あとちょっと腕っぷしが強いけどね
井澤くんは分析能力とかめちゃくちゃ高いタイプでしょ?あと石丸さん?あれは相当つよいっしょ、ちょっと人間離れしてるね・・・・
で・・・黒ちゃんさ・・・あんた何者?俺レベルでもわかるくらいなんだけど」
「なんでしょうねぇ・・・昔はよく『化物』とか言われてましたけど」
「『化物』ねぇ・・・」
「まあ、ただのラーメン好きのオッサンですよ。あ・・・」
黒田はスマートウォッチに通知を確認した
「何?」
「井澤っすね、えーと『杉村太子のデータ送っておいた』ですって」
「え?調べてくれたのか?」
「みたいっすね、そういうやつっす」
「この変な時計に送られてんのね・・・なになに・・・・」
杉村太子17歳、高校2年
母親と2人暮らし、高2になってからあんまり学校に行かなくなって、歌舞伎町に入り浸るようになる。
『なんでも屋』と言われていて、怪しい取引の仲介をやってるらしい。
補導は3ヶ月前に1回と先月に1回、二回とも母親に交番まで迎えにくるように連絡をするが、連絡が取れずに朝まで交番で保護
危険度ランクはB
情報処理能力はかなり高い
「なるほどね・・・」
「なんかわかりました?」
「そうね」
21時、歌舞伎町の広場に杉村太子は一人で地面に座りスマホを操作していた。
柏崎と黒田が杉村にあと5mほどで接触するかというところで、杉村はすっと立ち上がり、ゆっくりその場を去ろうとした。
「杉村くん?」
「・・・・・・」
杉村は立ち止まると
「なんすか?あんたら?人違いじゃないっすか?」
「いやいや、とって食おうってわけじゃないからさ、ちょっと話しようよ、お願いしたことがあるんだけど」
「・・・・・・じゃあ・・もうちょっと人いないところで」
杉村は少しだけ人が少ない場所に移動して、話し始めた。
「なんすか?パパ活?薬?」
「どうやってんの?近くの人間のスマホハッキングして、それをハブにして通信してんの?」
「え?」
「やりとりはハッキングしたスマホでやって、足がつかないようにしてる感じ?」
柏崎は杉村にいきなり確信を突く質問をぶつけた。
「何?お前ら?サツ?」
「うん、そうだよ。つうかさ・・・薄々っていうかはじめっから気づいたでしょ?だから近づいたら、逃げようとしたんでしょ?」
「・・・・・」
「いやサツじゃなくてさ、俺たち君と同じだよ。わかるでしょ?こっちのおじさんをちゃんと見てみなよ」
杉村はマジマジを黒田のことをみて分析をしたようだった
「・・・・なんすかこの人・・やばくないすか?」
「うん、やばいよ。だから大人しく話しようよ」
「・・・・」
杉村は観念したのか無言でうなづいた。
「うーん・・・・親が離婚したの去年?そんで家計が大変になって、お母さん忙しくなって気を引くためにって感じ?」
「ちげえよ・・別に・・母さんの気を引きたいとか、ガキじゃねえし・・・」
「そう?夜の仕事してまで稼いで欲しくねえから自分で稼ごうって思ったんじゃねえの?」
「・・・・・・・・・・」
「学校行かなくなったのも、どうせそのこと言われて喧嘩でもしたんだろ?」
「・・・・・・・・・・」
杉村は図星だったのか、うつ向いたまま無言になってしまった。
「母さん助けたいなら、学校行って、もう少しまともな稼ぎ方しろよ」
「え?」
「いやだから、明日から学校行って、バイトでも探せよ、お前の能力活かして真面目にやったらこんなコスい仕事の倍稼げると思うぞ」
「パクられたら学校どころじゃねえだろ」
「あー、見逃してやるよ。次見つけたらパクるけど」
「え?」
「ぶっちゃけ、お前証拠とか残してねえだろ?まあ・・うちには優秀な奴らいるから、調べればわかるけど」
「本当に見逃してくれんの?」
「ああ、約束するなら」
「・・・わかった・・・」
「はいよ、じゃあ今日は家に帰んな。また補導されっぞ」
「ああ・・・ありがとう・・・」
「おう、じゃあな」
杉村は小走りで駅の方向に向かって行った。
柏崎と黒田は姿が見えなくなるまで見届けると。
「井澤の情報以外も調べたんすか?家庭環境とか?」
「いや、勘」
「え?勘すか?」
「うん、まあ、勘っていうか経験かな・・・大体あんなもんだよ、こういう繁華街で燻ってる、ああいう野良犬みたいな子は」
「すごいっすね・・・『刑事の勘』」
「あはは、そのうちすぐわかるよ・・・腹減ったな・・・」
「ラーメン行きます?」
「また?笑。まあ・・いいか・・・」
柏崎と黒田は、今日2回目のラーメンを食べてから帰宅した。
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