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布団に倒れ込み、傍らで荒い呼吸を繰り返し目を閉じる碧を抱き寄せた。碧の大きな目が佐良を捉え、まぶたが伏せられる。もう一度唇で触れ合う。徐々に肩の上下が鎮まり、長い息を吐いた。そのまま碧を緩く抱く。
「佐良。本当に俺が佐良と別れようとしてると思った?」
ひそやかな声に佐良は目を開けた。
シーツに横になった碧が満たされた目で見ていた。佐良は碧の顔にかかる髪をかきわけてやる。指が額に触れ、碧が目を細めた。
「思ったよ。慌てた」
「……病院ではじめて会った時から、このひとと離れたくないって思ってた」
「本当に?」
「本当」
碧は佐良の頬に唇をつける。
「どうしてだろうって今も思うけど、もうどうでもいいっていうか……投げやりじゃなくて……まるごと、いいんだ」
碧は首に腕をまわし、鼻先を寄せて思う存分息を吸い込んだ。
「佐良の匂い大好き。俺、この変態さには自信あるよ」
「こんなのでよければいくらでも」
碧が深呼吸し、吐き出した息が首筋をくすぐった。佐良は碧の引き締まった腰に手をすべらせる。碧が困ったようにほんの少し眉をしかめ膝頭を擦り合わせた。その表情が堪らなくかわいく、まだ汗で湿っている身体を抱き寄せた。
「ばか」
「そうだね」
碧が足を絡める。太腿の感触がなめらかで、佐良の中に燻る熱が微かに温度を上げた。
「碧、もういなくならないで」
「ならない」
「心配もさせないで」
「させないよ」
「結婚しよう」
碧が目を見開いた。
「それは……もう言っただろ」
「言ってないよ」
暖色の明かりの中佐良を見上げる瞳が揺れた。
「答え、聞かせて」
碧は佐良の瞳の奥を見ていた。表情が崩れる。そのまま泣き出しそうな笑顔に変わった。
「……うん。結婚、しよう」
佐良は息をつき、ゆっくりと碧へ顔を傾けた。嫌がるのではというほど重ねたが、碧はされるがままに受け止め、やがて佐良の首に腕を絡めてせがむように鼻を寄せた。ふたたび兆しはじめた碧の足の間を握り込む。碧の腰がびくりと揺れ、漏れるふたりの息が徐々に上がっていく。
「手加減できないかも」
「いいよ……全部……ぐちゃぐちゃにして」
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