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蕩ける唇を呑み込むように覆った。貪るごとに体温が上昇していく。ついさっきまで佐良を抱いていた背後の窄まりに昂りをあてがった。しがみつく碧の指が腕に食い込む。もっと強くてもいい。碧がつける痕ならば。膝を持ち上げ、腰を抱き込んで奥まで貫いた。
擦れ合う場所から濡れた音が激しく立つ。内側が吸い付き、抽挿を重ねるごとに佐良を締め上げなぶる。前髪から汗が流れ碧の上に滴り落ちた。
「佐良」
求める碧の手を握り唇を重ねた。
碧と過ごした、失われた映像がちらついた。激しく突き上げながら、言いようのない喜びの感情が身体の隅々に満ちていく。このひとが佐良を潤わせ、生かせた。記憶は誰かの中にひとかけらずつあり、佐良の中にあるピースをすべて合わせれば一枚の絵になる。間違いなくあると思えば悲しくはない。
時間の感覚がなくなるほど身体を合わせ、碧はくったりと佐良の胸に頭をあずけ眠ってしまった。
布団に寝かせた碧にタオルケットをかけ、枕元の明かりを消す。
隣で佐良は仰向けになり真っ暗な天井を見上げていた。目を閉じれば暗闇を細かな光が埋め尽くす。明るくてきれいで、光源を探していたら隣で立つ寝息にたどり着いた。
柔らかい髪に額を伏せてエアコンの音を聞いているうちに、まぶたの裏のきらめきはすうっと消えていき、腕の中には手触りのある体温が残っていた。
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