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「ヒガタ先輩遅いっすー!」  入り口付近には乾ききっておらず髪が微妙に濡れているミルトとなぜかラクトがいた。そラクトはいつもより機嫌が悪そうだ。 「所長から迎えに行けと頼まれたのですよ」  どうしてラクトがいるのかと聞く前にこちらの思考を読み取ったように彼は言う。こんな場所近づきたくなかったのにとラクトは苛立っているのか地面を何度も蹴っていた。 「遅くなってすまなかったな」 ラクトは俺の言葉を無視しスタスタと歩き出し、俺とミルトは彼を追いかけるように施設を出た。駐車場まで歩いている間ミルトがああと何かを思い出したような声を出し俺に話しかけてきた。 「結局上着を回収しなかったすね」 「返してもらおうと思ったのだが手放してくれなくてな、そのまま置いてきた」  汚れて衛生的にはよろしくなかったためできれば洗濯したかったのだが、そうぼやいていると前を歩いていたラクトがホイホイと考えもせずに貸さなければよかったのですよ。と少し棘のある言葉を言い放った。 「ああ、でも返してもらう約束はしたぞ。彼と食事に出かけるときに返してもらうという条件で俺は貸すことにした」 「どうしてあなたはそうやって相手に気があると勘違いさせるようなことをするのですか? 変に執着されても知りませんよ」  俺の言葉にラクトは反論するのだが、俺には彼の言っている言葉が理解できなかった。気がある? 執着? と首を傾げる。ラクトはため息をつき 「彼はそんな風に見えなかったが」 「そう見えているだけでうまく隠しているだけかもしれませんよ」 「どうしてお前はそこまで疑うのか…… 。よくわからんな」 「あなたにはわからないでしょうね」  ラクトは車の扉を大きな音を立てて閉めた。物に当たるなと言っても聞く耳を持たない。車内は若干険悪な雰囲気になった。どうすればいいのかとおろおろしていたミルトには巻き込んでしまい申し訳のないことをしてしまったと心の中で反省した。
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