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 あいつ……トウゴと出会ったのは軍に入り4年が過ぎたころだ。俺が軍に入った理由は自身に特異な能力が備わっていたことそれが発覚し勧誘される形で入ったのだ。  軍に入った当初から俺は自身の能力が原因で遠巻きにされていた。確かに気味の悪い能力であったのだから関わりたくないと思うのは当たり前だろう。そんな中言っては悪いが場の空気を読まずに俺に話しかけてきた奴がトウゴであった。話をするうちにトウゴも俺と同じように特殊な能力を持った人間であることを知った。  どうやら彼も勧誘され軍に入ったようで同じような境遇であったことや同じ歌手が好きだということがわかりそれからはよく行動を共にすることが多くなった。彼が死んだのは4年前、戦場の最前線で銃弾に撃たれ死亡した。運が悪かった、残念だと軍の奴らは言っていたが俺だけは知っている。  彼は自ら死を選んだのだ。  彼の能力は危機的な状況になるという条件付きではあったが、能力が発動すると自分以外の全てのモノの動きが遅くなるという能力だ。それだけでは何にも役に立たないが、トウゴ自身は遅くなるという自身の能力の影響を受けずに通常と同じ速さで動くことが可能であった。  周りからしたら高速移動、瞬間移動したかのように見えるだろうな、と笑って説明していたことを今でも覚えている。危機的な状況でないと能力が発揮しないのだと俺だけに打ち明けてくれたのは信頼されていたからだと思っていた。  
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