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 「ヒガタさんこれ誰かに作ってもらったのですかー?」  ジロジロとこちらを見る視線が発生したのはこいつが原因であるが、追い打ちをかけるように無邪気に聞いてくるミルトに腹が立った。 「どうしてそう思うのだ?」 「だって、ヒガタさんいつもコンビニのご飯だし、料理ができるとは思わないっす」  料理ができないとはなんだと抗議するために無遠慮に弁当をのぞき込んできたミルトの頭を拳でグリグリと挟む。手の間から痛いっすと悲鳴が聞こえた。 「はあ、これは人に作ってもらったのだよ。朝食を作ったついでだそうだ」 「恋人の手作り弁当っすか!羨ましいっす。どんな人なんですか? 先輩の彼女さん」  事務所内がざわざわとし始める。ミルトはなぜ恋人だと勘違いし ているのかよくわからなかった。ここで誤解を訂正しておかなければ厄介なことに巻き込まれるのは俺でわかる。 「恋人はいない、誤解だ」  ミルトは素直な奴だから訂正すれば変に言いふらすことはしないだろう。できれば事務所内の奴らの誤解もとけたらと思っていたのか、声は自然と大きくなっていた。 「大声で叫ばないでください。うるさくてまともに食事もできません」  不快そうにする声が聞こえ、後ろを振り向くとラクトがいた。顔を歪ませいかにも不機嫌ですと言っているような顔であった。 「ああ、すまない。ミルトが変な勘違いをしているようで訂正したかったのだ」 「あんな大声だったのでそこまでは聞こえていましたよ」  それで何が誤解なのですか? 意外にも色恋沙汰に興味があるのかラクトは俺の席から離れなかった。 「俺に恋人なんていない、これは知り合いが作った。泊めてくれたお礼だそうだ」  なんだ、てっきり恋人だと思いましたーとミルトは驚き話に飽きたのか昼食を食べ始めた。俺の言葉を聞いて事務所の職員たちももう興味が失せたのか視線を向けてくることはなかった。 「あなたが人を泊めるなんて珍しいですね」  けれどもラクトだけは俺の話がまだ気になるようで追及する。 「住んでいたアパートに空き巣が入って鍵の取り換えやらがあるらしく一晩泊めることになった。頼れるのが俺しかいなったから断ることなんてできなかった」 「へえ、ヒガタさんその男から随分と信頼されていますねえ」 「まあ俺が救出したから懐いてくれているのだろう」 「ヒガタ先輩その人って1ヶ月前の人っすか?レヴィンさんと一緒の保護施設にいた」 サンドイッチを口いっぱいに頬張ったミルトが俺たちの会話に混ざってきた。口に物を含んでいるせいでくぐもって聞こえるが聞きたいことはわかった。 「そうだ、上着返してくれた時に連絡先を交換していてな。まだこの土地に慣れていないと思ったから保護施設を出た後もたまに食事に行っていた」
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