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風呂上り、のどが渇き冷蔵庫からミネラルウォーターを出そうとするとクルトも同じことを考えていたのかキッチンへ入って来た。
あ、ヒガタさんも水を飲みに来たのですか? と微笑みながら俺の近くにやってくるのだ。もちろんそれもあるのだがクルトにも用があったのを思い出した。それを伝えると僕、何かやってしまいましたか? と軽口を言ってくる。そのくらいクルトと俺のシェアハウスは上手くいっていた。
「明日だが、帰りが遅くなるから夕食は無くても問題ない」
「何時に帰ってくるのですか」
もっと早くに言っておけばよかったと謝るが彼は仕方がないですねと笑って許し怒ることはなかった。
「日を跨ぐのは確実だ。どこかの金持ちがパーティーを開くとかでその警備にあたることになった」
「大変そうですね」
「だから帰りを待たずに早く寝ろ」
「わかりました。でも夕飯を1人で食べるなんて久しぶりでなんだか寂しくなりそうです」
同居を始めてから多少俺が夕飯に遅れることはあっても2人揃って食べていることが多かった。
「そうだな、だがそれを理由に夕飯抜きにするのはやめてくれ」
彼なら寂しいからという理由で飯を食べず帰りを待つという可能性もなくはない。念のため釘を刺すが、彼がそうしようと思ったのにと呟いたのを聞き逃さなかった。しないだろうなともう一度念を押すと絶対にしませんと早口で返事が返ってきた。
翌日の朝、2人で家を出る。クルハはもう少し遅く出ても十分間に合うのだが少し前から同じ時間に出ることが多くなった。出勤の時間帯が被る近所の住民からは仲のいい親子だと言われるが、実際のところ親子とはこのような関係性なのかはわからない。
訂正しようと思ったがクルハは仲のいい親子だと言われることをとても嬉しがっているようで間違いを正そうとは特に思わなかった。
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