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「動くな、さもなければ撃つ」  扉を開け舞台の真下にある空間に入るとオークションの関係者と思しき人物を見つけた。人数は2人、銃を使わなくとも何とかなりそうだと安堵した。奴らは俺達の侵入に気が付くとすぐに警戒するかのように2、3歩下がり護身用と思われるナイフを手に持った。  そして次の瞬間こちらへ襲い掛かってきた。。ひょいっと体を横に動かすが、ナイフは腕を掠り生温い血が垂れてくるのがわかる。手に持っていたナイフを叩き落し、男に一発蹴りをお見舞いする。腕から流れていた血はすでに止まり服が赤くなったこと以外は特に気になることはなかった。  もう武器は持っていないだろうと男を取り押さえるために近づくと、キラリと何かに光が反射したのが見えた。奴はもう一本隠し持っていたのだ。先ほどのよりも小柄なナイフが俺のずぶりと腹に刺さった。あまりの痛みで膝をついた視界が一瞬白く光ったかのように見えた。頭上からはざまあみろと男が喜ぶ声が聞こえる。  ナイフに手を伸ばし勢いよく抜く。男は俺の行動を見て馬鹿だなと笑い出した。  それでよかったのだ。どくどくと脈打つたびに外に漏れていくような感覚はナイフを抜いた瞬間に止まり、10秒も経つと傷は完全にふさがり痛みはなくなっていた。服を捲り男に見せつける。腹には傷一つついていなかった。笑い続けていた男はぽかんと口を開け間抜けな顔をした。 「少し時間はかかってしまったが治ってしまうからな」  オークションの商品として売り出されていた男と同じく、俺も世間から能力者とよばれる者であった。能力は怪我をしても常人よりも早いスピードで再生するという非常にシンプルなものだ。 「こっちに来るな! ば、化け物」  そんな単純な能力でも怯えさせることは容易いものであった。いまだ化け物と連呼する男の腹に無性に腹が立ち数発発蹴りを与た。  大人しくなった男の荷物を漁るとポケットから鍵が出てきた。以前ここの運搬役として潜入中に何度か見たことのある鍵だった。あのときは確か珍しい動物を入手したなどと誇らしげに語りながら頑丈な檻に入っていると鍵を見せびらかしていた人がいたのを思い出す。  もう1人はどうするかと辺りを見渡すとラクトが応戦しているようだった。彼ならなんとかするだろうともう片方はラクトに任せ辺りを散策し始めた。
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