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「そういえばヒガタ先輩、上着はどうするんすか?」
ミルトがそれを指摘したことで上着を回収することを忘れていたのを思い出した。
「彼に着せたままだった。あの場所は気温が低く彼の服装は寒そうだったからなまた今度取りに行くことにする」
「あなたはまたそうやって人にホイホイと上着を貸して、これで何度目ですか」
同じようなことを過去に何度も行っていたため、それを知っているラクトはその癖を直そうと何度も注意してくるのだがいまだに治ることはない。
「人を助けるためには仕方がなかった」
今回のように低体温に陥っている人や、衣服が破れその機能を果たしていない状態を見るとヒガタはつい貸してしまうのだ。俺の私物だから問題はないだろうと言い返すとラクトは大きなため息をついた。
「わかりましたよ。それではさっさと撤収しましょう。あとは警察が何とかしてくれると思いますし」
「そうだな、事務所に戻って報告書を書かなければ」
俺たちは車に乗り込み大通りに向かって発信させた。外はすっかり暗くなっていたのだが、ビルや看板の光が明るく俺達を照らし寂しさはあまり感じなかった。
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