ぐーたらミーヤ

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 あと何日かで夏休み。こなければいいのに。  小学生のころは、一か月以上続くお休みが楽しみで楽しみでしかたがなかった。  だのに中学になって初めての夏休みは、考えるだけで気分がずっぽりめりこむ。  理由はハッキリしてる。クラブがいや。バスケ部がいやなんだ。 「いいなあ、ミーヤは。毎日がのんびりで」   ミーヤから返事があるなんて思ってない。だってネコだもん。からっぽになった小皿を前にきちんとおすわりして、わたしのことを見上げるだけ。  きゅるんと頭が右にかたむいた。もうおしまいなの? そんなおねだりが聞こえてきそうだ。  はいはい、わかりました。もうひとつまみ、あげるね。  お徳用パックから、だしに使うかつお節を引っぱり出した。お皿にのせるとすかさず、みゃー。  うん。いまのは、ありがとうって言ってるよね。 「にゃー」よりも「みゃー」と鳴くことが多いからミーヤ。わたしが勝手につけた名前。  どんなに遠くにいても、ミーヤと呼んだら耳をピンと立てて、ゆっくりよってきてくれる。ものすごく人になれたネコ。いまも勝手口の真下にあるコンクリートの踏み台で、わたしからおやつをもらっている。  ここは風通しもいいし、朝の短い時間しか陽に当たらないから、夏でもさわると少しひんやりする。よくみつけるよね、こんないい場所。  学校で見かけるのも、校舎にはさまれた給水タンクの上だとか、体育館の裏にある大きな木の根元なんかの涼しいところ。わたしがバスケ部で汗を流しているのに、涼しそうな顔してぐーたらお昼寝だなんて、うらやましいったらありゃしない。  たぶんノラネコ。梅雨の明けたころから、ふらっとうちにくるようになった。  お昼寝が大好きなくせに、手足はほっそり……、ちょっと変か。ネコだから全部、足だね。
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