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ワタクシは妄想コンテストなるものに応募する為の小話を考えていた。
お題は『猫』。しかし、ワタクシ、生まれてから今まで、猫を間近で観察した経験が無かった。野良猫はバイ菌を持っているから触らない方が良いと教わっていたし、ワタクシの実家では柴犬を飼っていたので、小動物をもふりたい衝動に駆られても、彼の尻を撫でていれば事足りていたからだ。
(ちなみに彼が寝ている時に尻を撫でると、高確率で噛まれるから注意した方が良い)
なので、猫本体を主人公に据えた小説を書くのは、リアリティの面から得策では無かった。
そこで、ワタクシ、二つの小話を考えた。
一つめは、猫を飼う事を夢見ていた女性が、猫アレルギーの発覚を機に、自分の妄想力で猫を生み出す事を決意すると言う内容。正直、あまり面白くなさそうである。
二つめは、単独行動を好む猫っぽい先輩と、彼女を慕う後輩の、喫煙所を舞台とした会話劇。キャラクターには可能性を感じるが、いかんせんオチが思いつかない。
構想という名の妄想が暗礁に乗り上げてしまった。ところで、今日も寒い。デジタル時計に付いている温度計の表示は11度。その表示を見ると、ワタクシ、余計に寒く感じる。
こういう日は、布団にくるまって、暖房をつけながら、構想をするのに限る。そして、ワタクシ、そのまま寝た。
物音で目が覚めた。
部屋の中は既に真っ暗で、ワタクシ、何も見えない。しかし、暗闇の中で何かしらと目が合っているのは分かった。
「あ、起こしちゃった? 寝てていいよ。テレビでね、珍しい材料を使った餃子の作り方を放送してたの。そのレシピでいっぱい作ったから、お裾分けにきたんだ。何使ったか、当ててみて。冷蔵庫に入れておくから。じゃあ、帰るね」
何か返答をしたかったが、ワタクシ、暖房のせいで口の中がカラカラで声が出ない。唾が喉を潤す頃には、部屋の中にはワタクシ、ひとりぼっち。
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