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21時半に再び戻って来た小学校校舎は、夕方の顔から大きく一変し、ひどく不気味だというのが志翠の率直な感想だった。
使用する側の校舎は、かなりの割合で電気が点いているにも関わらず、志翠はその印象をなかなか払拭させることができなかった。
「なんか……怖い、夜の学校って……」そう志翠が怖気つくと、清風は「ああ」と同調しながらも「俺を怒らせたことを後悔したか?」と意地悪を付け足した。
「清風ってば、マジ性格悪い!」
「そうだよ、今頃気づいたのか?」
志翠に腕を殴られながらも、清風はケラケラとわざと軽く笑って、志翠の恐怖を別の場所へと逸らせてみせた。
屋上までのぼり、厚手のレジャーシートを何枚か広げてバラバラと部員たちはそこへ座った。
流星群まではまだまだ時間があるため、真面目に天文について復習するのかと思えば、始まったのはOBたちによる恋愛調査だった。
「天文部はいわば喪部だ! モテない男の集まりだと揶揄される。そうならないためにも夏合宿までになんとしてでも女子部員を獲得してだな……」と、後世のなんのためにもならない助言を延々とOBから聞かされた。
「先輩、お言葉ですが今年は地学オリンピック優勝という目標が我々にはあります! 今年こそうちは成し遂げるます! このスーパールーキー明月が我々を優勝へと導いてくれます!」
「ダサい通り名がまた追加された……」と志翠はポソリと心の声を漏らしてしまい、清風が慌てて口を塞ぐ。
「気にすんな、あの人たち毎年あれだから」と2年が志翠へ耳打ちする。
「それに、お前らは顔のつくりも良いんだし、そもそも天文部に入って来たことが例外案件過ぎんだよ」
「いや、俺は星が好きで入ったんです。これ以上純粋な入部動機他にあります?」
「そこがもうおかしい、明嵜はキャラと中身が間違ってるよ」
「先輩、明らかに今俺を馬鹿にしましたね、さすがの俺でもわかりましたよ」
「ちょっと揶揄っただけだよ〜、怒んなよ明嵜〜、可愛いから思わず揶揄っちゃうんだよ〜、なぁ? お前ならわかるだろ? 明月」
「は? なんで俺に振るんですか」
あまりにも真顔に答えられてしまい「振る相手を間違えたわ」と2年は大きくシラけた溜め息をついた。
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