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私、世橋夏鳴。
どこにでもいる普通の女の子。皆さんからは検便って呼ばれてます!
朝は自転車で20分ぐらいかけて通学して。だいたい5分前くらいに教室に到着。
昼休みは教室とか購買とか、天気の良い日はお外のベンチで友達とご飯を食べて。
放課後はブティックやゲームセンターを巡って、日が沈む前にはお家に帰って、手作り晩ご飯。
ゲームしたり漫画読んだり、それで何となく時間を潰して、眠くなったらお布団入って。
私は止まりません。青春を、走っていたいです。
それは特別なことがあるわけじゃないけど、それはそれとして良い時間。
平凡だけど止まらない、きっと幸せな日々。
でも、少年少女というのは今の時代、普通であっても、これくらいの刺激はあるものなんだと思う。漫画とか、私と同じくらいの年の女の子達は皆、何かに煌めき、何かに時めいているのだから。
現実でも、きっとそうなんだ。
だから今。
私は――
【夏鳴】「……はぁ~……」
【金嶺】「……なに、どったのクソめんどそうなため息つきやがって」
【夏鳴】「……金嶺ちゃん」
いきなり怖いこの人は、大槻金嶺ちゃん。
放課後はほとんど一緒にいる、私の大親友さん。文句言いつつも、時に跳び蹴りされつつも、何だかんだで私に附いてきてくれる女の子。
……金嶺ちゃんが声を掛けてくるってことは、もう昼休みになったんだ。ボーッとしてるといつも時間はあっという間だ。勿体ない、授業の先生にも失礼なことをしてしまいました。
しっかりしなきゃ、と思い直す。……のに。
【夏鳴】「はぁ~~~……」
【金嶺】「ウザい」
【天】「……世橋さん。何だか今日はずっとアンニュイだね。何かあったの?」
【夏鳴】「天くん……えっと、ですね。何と言ったらいいでしょう」
クラスメイトの天くんにも声を掛けられた。……周りからもそう見えちゃってるんだ、だとしたら重症だ。
確かに、憂鬱。……いや、きっと厳密には違う。何よりも先にあるのは。
戸惑い、だ。
【夏鳴】「ちょっと、どうしたらいいのか分からなくって……えへへ、みっともなくてすみません」
【天】「顔も紅いけど、もしかして体調悪いの?」
【金嶺】「体調不良? いやアンタ風邪引くタイプじゃないでしょ」
【夏鳴】「うーん、風邪とかではないですけど……強いていうなら、心の風邪? みたいな?」
【金嶺】「要領得ないんだけど」
【天】「心ってことは……悩み? 僕たちでよければ、聞くよ」
【金嶺】「いや、私はパス――」
【天】「親友でしょ大槻さん、ホラホラ」
【金嶺】「うっさい、馴れ馴れしいんだよ柳泉寺」
【夏鳴】「ふふ……有難うございます。金嶺ちゃん。天くん」
……このままでは、周りの人も迷惑を被ってしまう。
そして私自身も、何が何やら、なんだから。
ここは頼れる2人に、打ち明けてみよう。この心の、揺れを――
【夏鳴】「……初めてのことで。動揺、してまして……」
【天】「……ホントに顔紅いけど……あ、もしかして恋とか?」
【金嶺】「ウゲッ……」
【夏鳴】「あはは、何だか恥ずかしいです。うーん、やっぱり言うのやめようかな~……!」
【天】「はは、そこまで勿体ぶられるともうコッチも退きづらいよ! ババッと言っちゃおうよ。勿論、世橋さんが大丈夫な限りだけどね」
【夏鳴】「え、えっと、ですね」
えっと私ね、と何度か繰り返して、ゴニョゴニョになりつつも。
確かに顔が紅くなってるのも熱さと鼓動の高まりで感じながらも。
私は、友達の2人に。
【夏鳴】「あの……お恥ずかしながら、私――」
初めての出来事を、明かす――
【夏鳴】「――痔を患いました!!!」
【金嶺】「ホントに恥ずかしいヤツじゃん」
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