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【夏鳴】「な、金嶺ちゃん! そんなこと言っちゃダメですよ、痔は現代社会では3人に1人は悩んでるんですよッ!!」
【金嶺】「分かった、分かったからお弁当開かれる昼休みの教室に大声でその告白やめて」
そう、私、世橋夏鳴は。
初めての痔疾に動揺していた。
【夏鳴】「朝、いつも通り通学前にバシューッとおトイレかまして紙で拭いてたら、赤かったんです! これはちょっと明るめな茶色なだけだよね? ってマジマジ目を凝らして観察してみましたけどやっぱりどう見ても赤かったんです!!」
【天】「赤かったんだねー……」
【夏鳴】「そうです、赤かったんですッ……!後ろを拭いて、赤かったんですッ!! それからは、ソファに座るのも、自転車に乗るのも、この椅子に座って授業を聴くのも、お尻を意識してしまって……」
【天】「それで今日一日上の空だったんだね」
【夏鳴】「嗚呼、どうしましょう……!! 次のトイレタイム、激震確定です、学校のおトイレを紅く染めるの確定してるんですよ私!!」
【金嶺】「ランチタイムだっつってんでしょーがぁ!!(←跳び蹴り)」
金嶺ちゃんのビークワイエット跳び蹴りが炸裂した。
お腹に、炸裂した。
【夏鳴】「おぉおおお金嶺ちゃん、何てことをぉ……ッ! 私おトイレ我慢してたのにぃぃぃ……もうコレ、行かなきゃいけない具合なんですけどぉぉぉ……!!!」
【天】「トイレの我慢は良くないよ世橋さん。痔疾を患ってしまったのは仕方ない、ここは諦めという名の自然体で――」
【夏鳴】「――ふふふ」
【天】「世橋さん?」
おトイレからは、逃げられない。
人類の宿命。殆ど総ての生物に科せられた鎖。
ならば……
【夏鳴】「こ、こうなったら、新たなフェーズを開くまで! 肛門なだけにッ」
【金嶺】「もう1発蹴ろうか?」
【夏鳴】「普段から検便の容器扱いされてる私ですが、今日からは血便なのか便と血液なのかの判別もしちゃりますよッ!! ねえ金嶺ちゃん!!?」
【天】「そろそろ僕は世橋さんが何を言ってるのか解んなくなってきたけど大槻さんは解るの?」
【金嶺】「解るわけないし解りたくもな――ッ?!」
私は立ち上がり、金嶺ちゃんの手を引いて廊下へと!!
最寄りの花摘みエデンへと走り出した――!!
【真面目な学生】「ちょっと! 廊下は走るの禁止なんですよ!!」
【夏鳴】「すみません、今からレッドスプラッシュマウンテンなんですッ!!」
【真面目な学生】「え……? 何それ、新しいアトラクション施設?」
【金嶺】「ちょ、何で私の手を引く!!」
【夏鳴】「金嶺ちゃん、親友でしょ!! なら私の進化した菊門の様子を見届けてくださいよ!! 親友でしょ!!」
【金嶺】「ソレが親友の定義なら私はアンタの親友余裕でやめるわッ、ちょ、離せ離せェ!!」
初めてのこと。だから、混乱した。でもただそれだけのこと。
だけど、痔疾というのは別に珍しいものでは断じてない。寧ろ、共に歩み共に墓場へと埋まるパートナーみたいなものだといえないだろうか?
私は、そんなパートナーを持った、ということだといえないだろうか!?
【夏鳴】「ッ……便秘焦らしプレイも超えた。下痢LA豪雨ショットガンプレイも超えた。その次が、今この時間この場所に訪れた、それだけなんですッ」
【金嶺】「離せぇええええ――!!!」
【夏鳴】「見届けてください、金嶺ちゃん!! 世橋夏鳴は――」
――走り続ける、止まらない、女の子なんです。
そうだよね……お母さん――?
……………………。
【夏鳴】「はぁ……はぁ……はぁ……ちゃんと、ちゃんと見ててくださいね金嶺ちゃん……」
【金嶺】「……………………」
【金嶺】「(昼休みに何を見せられてるんだ私は――?)」
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