1.お別れ

1/1
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

1.お別れ

 その日、僕は泣いた。あんまり泣き過ぎて息ができなくなるほどに。小学生五年生のクリスマスイブ。ママがケーキを用意してくれた。大好物の唐揚げも山盛りだ。なのに、僕の涙は止まらない。 「圭太(けいた)、仕方ないのよ。みぃちゃんはもう二十三歳。人間でいうとね、百歳以上なんだって。よく頑張ったって送ってあげましょうよ」  そういうママの目からもぽろぽろと涙が溢れていた。  そう、今朝猫のみぃちゃんが遠い遠いところにいってしまった。まっ白な毛皮はもう温かくない。金色のキレイな瞳はもう開かない。 「みぃちゃん、どこに行っちゃったんだろうね。ねぇママ、僕ね、サンタさんからのプレゼントなんかいらない。だからみぃちゃんにもう一度会いたい。会ってぎゅってしたいよ」  そう言う僕をママがぎゅっとする。 「そうね、またいつかきっと会えるわ。ええそうよ、きっと会える。その時は笑顔で迎えてあげなくちゃね」  僕は泣きながら頷く。パパも僕の頭を優しく撫でてくれた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!