おじいさんA

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昔々、あるところにおじいさんAが住んでいました。 おじいさんAは、とてもお金持ちでした。 なぜなら、ことあるごとに動物や困っている人を助けては、 恩返しという名の物品及び金銭の贈与が行われていたからです。 隣に住んでいるおじいさんは、おじいさんAばかり 幸せになっていることが羨ましく、妬ましく思っておりました。 こっそり後をつけて、おじいさんAの真似をして おにぎりを穴に転がしてみたり、 死んだ犬のお骨の灰を、枯れ木の桜にまいてみましたが、 どうも失敗ばかりで、うまくいかないのです。 とうとうおじいさんは、おじいさんAに恥を忍んで どうやったらうまくいくのか、金儲けのコツを聞きました。 おじいさんAは、言いました。 「実はな、わしは何度も同じ時間をタイムリープしているんじゃ。  本当はお前さんと同じように何度も失敗を繰り返しているが、  正しい選択ができたときだけ、時を進めている。  そうすれば、正しい選択をした事実だけが残る、というわけじゃ」 おじいさんは、とてもびっくりしました。 そして、タイムリープを繰り返しているおじいさんAのことを 今まで以上に羨ましく、妬ましく思いました。 おじいさんは「自分もタイムリープをさせてほしい」と頼みましたが、 おじいさんAは、決して首を縦には振りませんでした。 おじいさんは言いました。 「それなら力づくで、タイムリープの方法を聞かせてもらうまで!」 おじいさんが襲い掛かろうとしたところで、 おじいさんAの背後に控えていた、桃太郎や一寸法師、 その他いままで助けてきた、たくさんの動物たちが現れて あっという間におじいさんをこてんぱにしてしまいました。 それもそのはず。 おじいさんAは、けっして「いいおじいさん」なのではなく、 物語の正解の選択肢を追求しただけの「いいおじいさん風」の ただの「タイムリープができるおじいさん」なのですから。 金銀財宝だけではなく、様々な物語の主役たちを育て、助け、 手懐けているおじいさんAは、この裏世界では最強でした。 おじいさんAは、息も絶え絶えになったおじいさんに にんまり笑って言いました。 「これまでにも、わしの座を狙って襲ってくる奴は少なくなかった。  しかし昔話に『いいおじいさん』は、わし1人で十分。  一方「悪いおじいさん」の代わりなんぞ、いくらでもいるんじゃ。  残念だったのう。おじいさん『G』よ…」
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