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プロローグ
洋風の家から、男が出てきた。手には使い古しの大きな革の鞄を持っている。家の庭はとても広かった。草花やハーブが茂り、歩いて行く男の脛をこすって、朝露で濡らした。
よく見ると、草でほとんど見えないが、家から通りまで小さな小径がずうっと続いている。歩けば十分はかかりそうな距離だ。
男が小径の途中で横道にそれ、さらに歩いていくと池のほとりに出た。
大きな木の下で立ち止まり、鞄を開けて中から丸いボールのような塊を出した。その塊を手の中で何度もよく揉んで丸くまるめる。そして地面に置いた鞄を机代わりにして、塊を上にのせると、手でおしつぶして平たくした。さらに手で少しずつひっぱるようにして、少しずつ押し広げていく。
ある程度の大きさになると、円盤のような生地を空中でふるった。洗濯したシーツを干すような動作だが、少しずつ回しながらふるっているので、綺麗な円形が大きくなっていく。
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