猫、九生

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(……ない。そんなこと絶対に有り得ない) チー助が人間になって、私を助けに来るなんて! 私は、そんな童話じみた妄想を頭から追い払う様に、敢えて他愛のない話をし続けた。 そうして、微妙な気持ちのまま辿り着いたショッピングモール。 「蓮、着いたね!確か、ペット用品店は此処の2階なんだよ!」 内心の戸惑いを隠す様に、努めて明るい声を出すと、入り口のエスカレーターに乗ろうとする私。 瞬間、足下を小さくて黒い何かが通り過ぎる。 「きゃぁっ?!」 それを避けようとし、盛大にバランスを崩す私。 (駄目だ!落ちる!) 覚悟して、ぎゅっと目を閉じた瞬間ーー 「危ない、真央!」 切羽詰まった様な蓮の声が響くのと同時に、私はあたたかな腕の中に抱き留められる。 驚いて目を開くと、私は蓮の胸の中にすっぽりと包み込まれてしまっていた。 「れ、蓮……私……」 また助けてくれてありがとうーーそう告げようとして、私は、蓮が腕に大きな切り傷を負っていることに気が付く。 いや、それだけじゃない。 心なしか、呼吸も先ほどより苦しそうだ。 しかし、蓮は私の心配そうな視線に気付くと、明るく微笑んだ。 まるで、私の胸から不安を打ち消すかの様に。 明るい蓮の笑顔に、私も笑顔を浮かべるが、心に浮かんだ嫌な予感は消えることはなかった。
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