猫、九生

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「猫はさ、皆、9つの魂を持ってて、どんなに死にそう……いや、もし死んでも、8回目までなら、生き返ることが出来るんだ」 ーーだから俺は、真央を守る為にあの世から戻ってきたんだよ。 はにかむ様な笑顔で、そう告げる蓮。 その笑顔が、頭の中で、夢に出てくる青年と重なって……私はハッとした。 (……嘘でしょ、信じられない……でも……) 「あなたは、チー助なの……?」 震える声で、そう尋ねる私。 と、蓮はより一層照れた様な笑顔で頷いた。 「ああ。ただいま、真央」 「チー助っ!!」 泣きながらチー助ーーいや、蓮に飛び付く私。 そんな私の頭を優しく撫でながら、チー助は困った様な声で告げる。 「真央は昔から、泣き虫だなぁ」 「いいんだよっ。だって、これは嬉しい時の涙なんだからっ」 大粒の涙を沢山溢しながら、それでも私は、蓮に向かって飛びきりの笑顔を見せた。 猫の持つ不思議な魔力のせいだろうか? 蓮の足あった大きな傷は、いつの間にか消えてなくなっていた。 怪我をしていない人間を救急車に乗せる訳にはいかない。 平謝りで駆け付けた救急隊員に頭を下げる私達。 救急隊員の人達は、怪我が無くて良かったと笑って許してくれた。 そうして、バックヤードを出た私達は、フードコートの外にあるテラス席に座る。 頬を撫でる秋の風が心地いい。 私は蓮に向き直ると、彼がチー助だと分かってから、ずっと気になっていたことを聞いてみる。 「ねぇ、蓮?……これからは、蓮と、ずっと一緒にいられるんだよね?」 けれど、私の問いかけに蓮は答えることはなくーーただ困った様な表情で曖昧に微笑むだけだった。
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