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暫くそうしていた後、ティーニーの前足から徐々に力が抜けていくのを感じる私。
(ティーニー。私の気持ち、ちゃんと伝わったかな?)
私はティーニーの前足から抜け出すと、背伸びをし、少しだけ大きくなってしまったその頭を撫でようとする。
が、突然吹き付けた秋風が、テラスに飾られていた秋桜の花弁を乱暴に散らせる。
舞い散る花弁で一瞬視界を塞がれ、バランスを崩す私。
(あ、まずい……!)
そう思った瞬間、私の身体は空中に投げ出されていた。
「真央!」
「真央ちゃん!」
(嫌だ!折角ティーニーと仲直り出来たのに!……やっと、またチー助に逢えたのに!こんなところで死にたくないよ!)
しかし、そんな私の身体が、不意に2つの強い力で持ち上げられる。
「?!」
再度逆さまになる空と地面。
私は強かにテラスの縁に腰を打ち付ける。
「いったぁ……」
この一瞬の内に何が起こったのかーー?
私が慌てて辺りを見回すと、テラスの縁に辛うじて片手で掴まる蓮の姿があった。
蓮のもう片方の腕の中には力を使い果たしたのかぐったりしているティーニーの姿がある。
「蓮?!ティーニー?!」
私は弾かれた様に立ち上がると、そのまま蓮に駆け寄り、その手を握る。
そうして、力いっぱいその手を引っ張った。
腰が痛いのなんて、もう、とうに吹き飛んでいる。
「蓮!頑張って!」
必死に蓮に呼び掛ける私。
けれど、蓮は私に申し訳なさそうに微笑んだ。
「悪ぃ。約束、また破っちまったな」
その言葉に私は、はっとする。
『約束』。
私の頭の中に、いつも見る夢の出来事が鮮明に蘇ってきた。
『ねぇ、約束して?もう、2度と私を助けないって』
夢の中で、いつも泣きながらそう呼び掛ける私。
呼び掛けている相手はーー
『ごめん。それだけは、出来ない。だって、俺は……お前のことが……』
蓮だ。
そうだ。私は1度、彼に逢った事がある。
あの生死をさ迷う大事故の時。
私は、確かに蓮に出逢っているのだ。
(こんな大事なこと、何で忘れてたの……!)
それを思い出すのと同時、私の頭の中には別の事も蘇っていた。
『猫には九生あるって知ってる?』
それは、先ほどの蓮の言葉。
確か蓮は、猫には9つの魂があって、8回目までなら生き返れると言っていた。
(なら、9回目は……?)
とても嫌な予感が私の全身を襲う。
私は蓮の手を握る両手に強く力を込めた。
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