猫、九生

9/10
前へ
/10ページ
次へ
しかし、蓮は私が握った手を猫の手に変化させると、私の手に爪を立てて来る。 「痛っ!蓮、何で……?!」 彼の行動の意図が分からず、睨み付けようとする私。 けれど、彼の申し訳なさそうな視線とぶつかった瞬間、私は彼の意図を全て理解した。 (蓮は私に手を離させようとしてる!) そんなことはするまいと益々握る手に力を込める私。 「絶対絶対離さないから!」 蓮もティーニーも絶対に助けてみせる。 しかし、疲労からか少しずつ握る手に力が入らなくなっていく。 と、こんな状況だというのに蓮が不意に微笑んだ。 「なぁ?聞いてくれる?」 「やだ!聞きたくない!」 聞いたらそれが蓮の最期の言葉になってしまいそうで、私は必死に頭を振る。 でも、蓮は構わず言葉を続けて来た。 「猫ってさ?すっごく執念深いんだぜ?1度気に入ったら、ずっと追い掛けるんだ。……だから、さ?……俺もこいつも、生まれ変わったら、またお前に逢いに行くよ。約束する」 そう告げるや否や、私の手を乱暴に振りほどく蓮。 蓮とティーニーの姿が小さくなっていく。 「やだっ!行かないで!蓮!!蓮!!!」 泣きながら、必死に手を伸ばす私。 しかし、その手は虚しく空を切るだけでーー。 涙に濡れて見つめた地面には、小さな小さな猫の遺体が2体、折り重なる様に倒れていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加