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   助けてくれた男性は、さらに見上げねばならないほど長身だった。180はあるだろうか。いきなりの登場に男は完全にびびったようで、そそくさと走り去って行った。  あんな情けない男にまで怯えてしまう自分が嫌になる。  自己嫌悪と安堵が混じるため息をつき、お礼を言うべく沙也子は彼を見上げた。 「あの、ありが……」 「遅れてもいいから時間より前に来るなとメールに書いておいたよな。なんで1時間も早く来てるんだよ、バカか」  漆黒の髪。鋭い瞳。整った顔はよく見れば汗だくで、彼は鬱陶しげに前髪をかき上げた。深々と息を吐き、じろりと沙也子を睨む。 「早めに来て正解。いや、1時間前でも遅かった。くそっ」  そのさらに1時間前に来たなんて、口が裂けても言えない雰囲気だ。だが、それよりも。  口の悪さと分かりにくい優しさ。みるみる面影が蘇ってくる。 「……涼元くん?」 「荷物、これだけ?」  沙也子を無視して、彼――涼元一孝(すずもとかずたか)は、キャリーケースを手に取った。 「あ、うん。ま、待って。自分で持つよ」 「いいから、はぐれないことだけ考えて」  さっさと歩きだすその背中に、あわててついて行く。変わらないなあと思いながら。  涼元一孝は、同じ小学校に通っていた幼馴染だ。そして、これから彼の隣に住むことになる。
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