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「桐島淳人と何かあった?」 「…っ!!」 その問いかけに、ビクンと身体を震わす大沢に思わず苦笑いする。 この2人は正直だ…良くも悪くも 「1週間ぐらい前からかなぁ、桐島がえらく落ち込んでてさぁ。何かあったのかな~、なんて思ってたんだけど」 「……よく…見てるんですね?淳人の事…」 机に腰を掛けた俺からは、目の前に立つ大沢が俯いたままで唇を歪めながら噛み締める様子がよく見える。 「いや、桐島が大沢を “そういう意味で” 好きなんてコト、誰が見ても判るだろう」 「……え?」 「知らぬは本人ばかりなり、とはよく言ったもんだよな」 「え……、えっ?!…淳人、が…俺を?」 「大沢は桐島が嫌いなのか?それとも他に好きな奴が居るのか?」 「……それ、は……」 「居るとして、そいつが他の誰かと抱き合っているのと、桐島が君の知らない誰かと抱き合っているのと、偶然でも見かけたらどっちが腹立つ?」 「………」 「うまく言えないけど…恋愛ってさ、数学みたいに公式に当てはめたら必ず正解が出るって訳にはいかないけど、国語や古典みたいにじっくりと何回も読み返す事で、見えて来るモノもあるんじゃないかな」 「…シロ…せん…せ…」 「俺にとっては桐島も大沢も大切な生徒だ。目前の受験も大事だけど、人生の重要な選択を間違って欲しくないと思ってる」 「…大切な……生徒…」 微かに潤み始めた目許を一生懸命に手の甲で擦る大沢を、可愛いと思った。
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