15人が本棚に入れています
本棚に追加
【おまけ】
~シロ先生~
「俺にとっては桐島も大沢も大切な生徒だ」
あの言葉に嘘も偽りも無い。
「でも残酷ですね。どう見ても、大沢君は菅原先生の事が好きだった訳だし」
「そうかなぁ…考えすぎじゃないのか?」
「これだから鈍感な人は…」
「あ。今バカにしたでしょ?」
「バカにしてません。呆れているだけです」
まったく、言葉がキツイというか口が悪いというか…
「でもさぁ、さすが古典担当なだけあるよな。 “恋愛は数学のように公式に当てはめて正解が出る訳じゃない。国語や古典みたいに何回も見返して初めて本質が見えてくる” なんて、名言じゃない?」
「ただ事実を言っただけです。割り切れる恋愛なんてある訳ないでしょう」
「そりゃあ…まぁ…」
「桐島君が大沢君を好きだって事も、僕が言わなきゃ気付かなかったでしょう?菅原先生は」
「……ハイ…」
「でも、まあ…あの2人は時計の針みたいですね。桐島君は秒針かな。長針の大沢君を一生懸命追いかけて、一回りして追いついたと思ったらまた大沢君が一歩先に進んで。その大沢君は短針の菅原先生を追いかけてる。そんな感じですね」
「人間関係を時計の針に例えるとは詩人だね~」
「思っても無い事は言わないでください」
「でもさ、長針は秒針が無きゃ前に進めない訳だろ?やっぱり大沢友希也には桐島淳人が必要って事じゃん」
「そうなりますね」
「じゃあ、短針の俺は誰を追いかければ良いのやら…」
眼鏡の奥で細められた鋭い視線が、今日初めて真っ直ぐに俺を捉えた気がした。
「それは御自分で考えてください」
「…冷たいなぁ、青柳先生は……」
- 続 -
最初のコメントを投稿しよう!