第2章:卒業【1】

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塾の教室の前で腕時計を確認すると、3時に10分前だった。 …淳人の事だからギリギリに来るかもなぁ そんな風に胸の内で呟きながらドアを開けると、その淳人が自分の席に座っていた。 もう一度腕時計を確認して、携帯電話のメールも確認する。 「今日は早かったんだな」 声を掛けても返事の無い淳人に近づくと、壁に寄り掛かったまま微かに寝息が聞こえてきた。 俺に会う為に急いで来て、早過ぎて待っている間に眠ってしまったのかと思うと、可愛いというか面白いというか… 「…起きるまで待ってやるか」 淳人の席の隣の列2つ前にある自分の席に座って、淳人をじっくりと見つめた。 睫毛長いよなぁ。 笑ったり泣いたり怒ったり、細い目で感情を雄弁に語るんだよな… 唇は少し薄いかな。 拗ねると直ぐに子供みたいに尖らせてたっけ… …淳人ってこんな顔してたんだな 暫く淳人を見つめた後、ポケットの中からカメラを取り出す。 卒業式でクラスメイト達と写真を撮り合った後、そのままブレザーのポケットに入れてあったのを思い出したから。 ファインダー越しに淳人を見る。 ピピッと機械音がして、ファインダーの中でぼやけていた淳人の顔が焦点が合いクリアになった瞬間、俺はやっと気づいた。 そっか…俺は淳人の事をとっくに好きになっていたんだ…
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