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「…淳人、落ち着いた?」
「うん……ありがとな、友希也…」
お互いに何だか少し照れくさくて、でも離れがたくてどちらからともなく手を繋ぐ。
「あれ?大沢君と桐島君?」
不意に名前を呼ばれて振り返った先に居たのは、この塾で古典を担当している青柳穂積先生だった。
「あ、先生、こんにちは」
「こんにちは。今日はどうしたの?…ああ、卒業式かな?」
「はい、そうです」
「……2人は、違う高校だったよね?」
「え?えぇ、そうですけど…」
「いや、2人共上着に付けてる “それ” がサクラソウみたいだから…」
「…え?」
「…あ、本当だ……同じ?」
「君達知ってる?サクラソウの花言葉は “初恋” 、 “希望” 、それに “青春の喜びと悲しみ” だよ」
胸ポケットに飾られた造花の飾りに触れ、お互いの顔を見る。
「大学は同じなんでしょ?喜びは2倍に悲しみは半分に…頑張ってね。卒業おめでとう」
「ありがとうございます」
「あ、ありがとうございます…」
塾を出てからも繋いだ手は離せないままで…
「友希也……あ、あのさ…」
「淳人、ずっと一緒に居ような。……一緒に時を刻んでいこう」
「…あぁ、友希也」
色違いの腕時計が西日を受けて、キラキラと輝いた。
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