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眠そうな顔で教室に入って来た少し小柄な男は、「ゲームで徹夜」なんて言ってるけど、本当は勉強していた事を俺は知っている。 頑張っている姿を人には見せたくない、そういう奴だ。 「またそうやって…そうだ。勉強会する?」 「え…?」 一瞬キョトンとして俯いた顔が微かにはにかむのに、淳人は本当に可愛い奴だと思う。 「どうする?」と再度返答を求めようとした時 「よぉ~し、皆席に着けよ。今日は先ず小テストからだ」 教室の扉が開き、見えた顔に、聞こえてきた声に心臓が跳ねる。 塾の数学担当講師、菅原士郎先生 皆、親しみを込めて「シロ先生」と呼ぶ。 俺も勿論そう呼んでいる。 シロ先生の名前を呼ぶ時、胸が苦しい様な弾む様な、そんな気持ちになる。 この事をまだ誰にも、淳人にも言った事は無い。 「よ~し、全員にプリントは回ったな?じゃあ、制限時間は15分だ。では、始め!」 静まり返った教室内で、鉛筆やシャーペンの音だけが響く。 時計ですら、勉学の妨げにならない様にと秒針が音のないタイプを掛けているくらいだ。 机と机の間をゆっくりと歩きながら皆を見て回るシロ先生の足音が少しずつ近づいて来るにつれ、俺の胸の鼓動も少しずつ大きく速くなる。 俺の横をシロ先生が通る直前それとなく顔を上げれば、先生と視線がぶつかる。 「頑張れよ」と人懐っこい笑顔が言ってくれた気がして、逸る鼓動のままに指先を動かした…
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