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塾生が帰った後の教室を一部屋ずつ見て回っていると、とある教室に見覚えのある後ろ姿を見つけた。
桐島淳人だ。
彼は他の講師達が言うのには、なかなかの努力家で成績も良いと聞くけど、数学は苦手なのかな?
それとも俺の教え方が悪いんだろうか…
なんて、考えていると
「……ふっ…ぅ、くっ……」
聞こえて来た押し殺した様な声と微かに震える背中に
「どうか…したのか…?」
思わず声を掛けてしまった。
驚いた様に振り返ったその瞳は潤んでいて、頬には涙の痕。
「お、おい!どうした!?何かあったのか?」
走り寄り、その肩に掛けようとした手を振り払われた。
「何でも!…………何でもないです…」
「何でもないって、現に泣いてるじゃないか!」
「ホントに何でもないですから…ちょっと小テストの結果が情けなくって、それで…」
「俺じゃ…話す気にはなれない、か…?」
意図的に伏せられた顔と背ける様にして離れかけた肩を、無意識に抱き寄せていた。
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